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シャツの上からでも、小さな、尖った感触は手のひらの上で確かに感じられた。薄い綿の布地越しに、形を変えていく乳房の温かさも伝わってくる。細い喉が反った。唇は引結ぶように閉じられていた。奥歯を強く噛み締めているのだろう。堪えなければ、どんな声が零れるだろう。聞きたいと思った。
強い芳香剤の匂いがする。清潔に磨かれた大理石の床、木目が描かれた扉と仕切り板。橙色の照明。金の飾り縁がきらきらと輝いている。社内の男子トイレは、街で借りているアパートメントよりもあきらかに広かったし、豪奢だったし、綺麗に整えられていた。
十代の膝から力が抜ける。個室の、ベージュ色をした便座の蓋の上に尻餅をついた。顎を取って、唇を触れ合わせた。柔らかくて、温かくて、目が眩む。形の美しい指がヨハンの上着を掴んだ。血管が青く透き通るくらいに力が込められている。女の胸を揉みしだいていた手を、背中に回してさすってやった。少しずつ力が抜けていく。
スピーカーから、昼休みの終わりを告げるベルが鳴った。ほとんど放心しながら、二人でそれを聞いていた。華奢な身体を抱き締めて、最後に唇を舐めてから、乱れたシャツを整えて、はだけた上着のボタンを留めて、ネクタイの位置を直してやった。十代は、幼い子供のようにされるがままになっている。
「ヨハンの手、好きだなぁ」
急にそんなことを言い出した。
「えーと、胸とか……キスとか……もう少し、触ってもいいんだけど」
「サボる気か? 海馬社長に嫌われるぜ」
「よし、急いで戻ろうぜ」
十代はそう言うなり、勢い良く立ち上がった。扱い易いミーハーだ。半分呆れながら、ヨハンも後に続いて個室を出る。
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