1000年に一度・

 休眠期だよ、と彼女は言った。
『明日は丸1日俺いないから、イロイロ危ないことすんじゃないぞ。ちょっと寝る。おやすみ。また明後日な』
 頭のなかに直接響く声。もう慣れたものだ、リュウとリンク、融合したドラゴン、アジーンのものだ。
「うん、おやすみ?」
 リュウは良くわからないながら、頷いた。
 竜の生態は、まだ人にはイロイロわからないことも多いのだ。
 リンク者のリュウにしてみても、そうだった。

 そして翌日。

◇◆◇◆◇

 わひゃー、という間抜けな悲鳴を聞いて、ボッシュはもそもそとベッドから顔だけ這い出した。
「……りゅ?」
 リュウだ、何があったのかは知らないが、隣接したバスルームから慌てふためいてじたばた暴れでもしているのか、騒々しい物音が聞こえてきて、それはボッシュの目を半覚醒から現実へ戻し、覚ましてくれた。
「んー、なんだよ、まだ早いじゃん……」
 時計を見なくても、時刻なら大体わかる。
 朝6時前。まだ全然眠っていられる時間だ。
 と、唐突にしいんと静かになった。
 さすがに気になって、ボッシュは起き出し、のろのろバスルームの扉を、とん、と叩いた。
「リュウ……? どーした……?」
 フナムシでも出たかと聞いてやるも、彼は確かそういうのはぜんぜんへいき、と言って笑っていたような、ならどうしたのだろう?
 しばらく扉の向こうで戸惑う気配があった。
 やがて扉が控えめに開かれ、おずおずとリュウが顔を出した。
 ボッシュはさすがに、ちょっと驚いてしまった。
「ボ、ボ、ボッシュう……。ど、ど、どーなってるんだろう?」
 リュウは、いつもの通りだった。
 いや、しかし変化していた――――わかりやすくいうと、元に戻ったということなのだろうか?
 背丈は、まだボッシュよりは少し低かったが、いつもよりも大分大きかった。
 身体は骨ばっていた。

 男、だった。

「ど、ど、ど、どうしようか、ボッシュ? おれ元に戻っちゃった……お、男だ。うわあ、どうしよ、ねえ、せっかくボッシュのお嫁さんになったっていうのに、あああ、り、リコンされるー……」
 ぐしゅ、と少し涙ぐんで、リュウは呆然としているボッシュをちらっと見て、落ち込んだふうに俯いた。
「お、男がお嫁さんって、ダメだよね、おかしいよね、やっぱり……」
 ボッシュは黙したままリュウのコートをはだけた。
 やっぱり、胸はない。
 いつものようにふにょふにょした、やわらかくてかたちの良い胸はない。
「……へっ? あ、あの?」
 股間を触ってみる……ちゃんと、ある。男だ。
 リュウはいきなり股座を掴まれて硬直していたが、そんなものはお構いなしだ。
 とにかく、リュウは混乱してしまっているようだった。

◇途中まで。