『ストレガフォースのリーダーを拘束して拷問しよう(2)』
……パラレル、ストレガえーたんが優しく拷問されたり陵辱されればいい!
(※性的表現を含みます。十八歳未満のかたは見ちゃだめですよ)




 僕らはシャドウを討伐して、影時間を消そうとしている『月光館学園特別課外活動部』という奴らと日夜戦っている。
 せっかくのペルソナ能力を自ら消そうとしているバカな奴らだとタカヤが言っていた。僕もそう思う。大体ペルソナが無ければ空っぽな僕らから能力が消えた後に、何が残るって言うんだ。死ぬより無様な姿を晒すに決まっている。
 僕の仕事は彼らのシャドウ討伐の妨害と、シャドウの保護だ。
――止まりなさい」
 タカヤの銃弾が、彼ら特課活員(『S.E.E.S』とか言う無駄に格好良い名前が付いているらしい)の足元に着弾する。彼らが振り向き、僕らを見て、「チッまたこいつらかよ」って顔をする。
「何の用だエージッ! オレらは忙しいんだよ! お前らの相手してる暇ねェの! チドリ以外!」
 順平が何か吼えているが、僕は構わず、肩を竦めて「行かせるかよ」と言う。
「この間の礼もある。全員纏めて灰にしてやる」
――黒田くん……」
 馴染んだ声に名前を呼ばれて見遣ると、まあそいつは彼らのリーダーだから当然のことなのだが、そこにいた。四月に僕と同じタイミングで転入してきた帰国子女だ。
「逃げるなんてひどいじゃないか」
 悲しそうな顔で、マフラーをぎゅうっと握っている。学生をやっていた時分には随分良くしてもらって、この僕がちょっと、気の迷いとは言え心を許しそうになった相手、なのだが――一皮剥けばとんだサディストだった。もうこいつの人畜無害な顔つきなんて信じるものか。
「望月綾時……! お前この間は良くも僕を、お前のせいで僕は飯食ってる時も風呂入ってる時も徹夜でオンライン・ゲームやってる時も、お前のその締まりのない顔がチラチラチラチラ浮かんでしょうがないんだよ! なんか毎晩夢に見るし! 昼寝してる時まで出てきやがって――なんでお前のことがこんなに気になるんだよ!」
『………………』
 僕が憎しみを込めて怒鳴った途端、S.E.E.Sのメンバーが、一部を除いてものすごく暗い顔で黙り込み、俯いた。「あの……ツッコミ必要?」「いやあえてスルーで」とか言っている。何だその反応。
 望月本人は何だかぱっと嬉しそうな顔になって、「えっほんと?!」とか言っている。僕の恨みは蜜の味か。お前本当に嫌な奴だな。ちょっとでもいいやつかも、って思った学生時代の僕の思い出を修正したい。
「僕のこと、考えてくれてたんだ。嬉しいな」
「そりゃ考えるに決まってるだろ、あんなことされたら……! タカヤ、チドリ、ジン、下がれ。あいつは恐ろしい奴だ。近寄ると卵を産み付けられるぞ。遠距離から手堅くライフを削れ。幸いそう足は早くない」
『了解!』
 僕の仲間たちが鋭い目で頷くのと反対に、S.E.E.Sのメンバーがものすごくやるせない目でリーダーを見つめている。なんだこいつら。やる気あるのか。
「あんたまさか……」
「いいいや! ともかく、今は考えるなゆかりッチ! 怖いから!」
 そして僕らは対峙して、召喚器を頭に突き付け――





「……あれ?」
 僕が目を開けると、なんでか身体が動かない。縛られていた。手錠を嵌められてベッドに繋がれていた。なんだこの既視感。
「あ、気が付いた? よかった……」
 顔を上げると望月がいた。泣きそうな顔をしている。彼は随分ほっとした様子で、トレードマークのマフラーを弄っていた。
 僕がいるのは、なんでか望月の部屋だった。パジャマ姿で拘束されている。
「君ね、大型シャドウの精神攻撃に遭って、今までずっと寝てたんだよ。満月の日からもう二日」
「え?」
「良かったほんとに、僕君がこのまま起きないんじゃないかと……」
 望月がぎゅうっと僕に抱き付いてきた。何だって言うんだ。
「……僕お前の敵なんだが」
「うん」
「起きない方が、その、お前ら的には良いんじゃないか」
「そんな悲しいこと言わないでよ。順平くんがなんかざまみろとか言ってたけど、君のかわりにシメといてあげたからね」
「あ、そう……ええと、僕の仲間は……やっぱり、」
「あ、うん。君が捕まってる間に逃げちゃったけど」
「あいつら……」
 僕はなんだ。お前らにとってはデコイか何かなのか。そういうのはジンにやらせておけ。
 僕は溜息を吐いて、途方に暮れる。また捕まってしまった。ひどいことをされるだろう。もういっそ舌を噛んで死んでやろうか。
 ――とネガティブになっていたところに、望月が慌てた顔で、「あ、なんにもしないからね」と言った。
「君その、身体辛いだろうし、僕治るまで我慢するから、だからその心配……しないでって、言っても無理かもだけど」
「当然だ。この前お前俺に何をした。その、……はじめて、だったん、だぞ」
 僕は真っ赤になって、恨みがましげに言ってやった。僕の初めては拘束されて男に数日強姦され続けるという、救いようのないものだった。いくらストレガだからってあんまりだ。ひどすぎる。正義の味方のS.E.E.S様は何をしてもいいって言うのか。犯罪者はお前ら(というか望月)だ。
「あ、うん……」
 望月はなんでか真っ赤になって、恥ずかしそうに俯いている。何だその、初恋真っ最中の中学生みたいな反応は。お前は女好きで手が早い、海外仕込みの帰国子女だろう。
――別に、丁寧に扱われることなんて期待していない。捕虜になるようなへまをやらかしたのは僕だ。覚悟はしてる」
「えっ? し、していいのっ?!」
「いや、できれば何事もないほうがありがたいけど」
 ちょっと往生際悪くぼそぼそ言ってみる。でも望月はもう聞いていないらしく、「感激だ」とか言っている。こいつの耳は、都合の悪いことをするっと流す仕様なのかもしれない。
「じゃ、じゃあ早速……あの、よ、よろしくお願いします!」
 拷問前に「よろしく」とか言われるとは思わなかった。僕は赤くなって、「あ、うん」とか言ってしまう。ああこれは僕の対応もまずい。ここは不敵に笑って「やれるもんならやってみるんだな。僕はお前らなどには屈しない」とか言ってみた方が絶対格好良かった。駄目だ。
「ん……」
 キスされて、パジャマの上着の裾から手を突っ込まれて、胸を撫で回された。
 このパジャマは言う間でもなく望月のものなんだろう。僕にはちょっと大きい。なんだか腹が立つ。
「君、痩せてるね。ちゃんとごはん食べてる?」
「んん……さ、三食……お茶漬け」
「お茶漬け?!」
「だって、うち、貧乏だし……影時間なくなったら、あ、絶対餓死する……」
「そう言えば君んとこのメンバー、みんなガリガリだよね……あの、良ければ今度、うちごはん食べにくる? ハンバーグとか……」
「ハンバーグ……?!」
 僕は驚いて望月を見た。ハンバーグなんて最近誕生日にも食べたことがないのに、望月は毎日そんなもんを食ってるのか。だから自然覚醒してペルソナとかがポロッと出て来るのか。なるほど。
 僕らの力の差は、そういう所から生まれているのだ。
「栄時くん、ヨダレ」
「……は。い、いや、駄目だ! 餌付けなど……される、ものかっ……」
 今の精神攻撃は危なかった。僕だから耐えられたものの、ジンやチドリクラスだと、今ので間違いなくS.E.E.Sに寝返っていただろう。
「あの……君ら悪い子なんだったら、影時間にごはんを万引きとかしてるんじゃ……」
「ば、ばか! そんな怖いことそう毎晩できるかよ! 恐ろしいことを言うな!」
「え、あ、ごめん……」
「一時の幸福は、得られるさ。だがな、その夜は決まって、コンビニの店員に追い回される夢を見るんだ。捕まって親を呼ばれて、死んだお父さんとお母さんが泣く夢をな……ッ」
「……あの、もしかして、君ら本当はものすごい良い子ちゃんたちなんじゃあないのかい?」
「ふ、ふざけるな。復讐代行人を馬鹿にしているのか?」
「……うーん……ちょっとお馬鹿ちゃんなのかも、とかは思ったんだけど」
 「もう集中しよっか」と言われて、乳首に爪を立てられて、僕は震えた。望月はなんでそうやって優しそうな声を掛けながら、こんなふうにひどいことができるんだろう。痛い。というかこいつ怖い。
「もちづ……痛い、」
「うん? 君痛いのスキでしょ?」
「す、好きなわけ」
 ないだろ馬鹿と言おうとしたところで、いきなり尻に異物感を覚えた。丸くて、冷たくて、卵みたいな、ブルブル震えるプラスチックのカタマリだ。ローターとか言うらしい。こないだ腹の中に入れられた。
「も、も、も、望月、」
「せっかく君の為に用意したんだから、ちゃんと使ってあげないとね」
「いや、いいから、――っ」
 抵抗しても、苦もなく押さえ付けられて、尻に突っ込まれた。思うんだが、ろくに訓練も受けてないくせに、望月のこのシャドウ並の力はなんなんだろう。
「あ、……や、もち、づき、きもちわる……」
「おちんちんのほうが好き?」
「い、いや、やっ、どっちもやだ……っ」
 僕はぐすぐす泣き出しながら、勘弁して下さいという気分になる。なんでこいつはいつもこんなエロい仕打ちを僕にするんだ。僕は男だ。
 そりゃ確かに、僕に屈辱を与えるにはものすごい効果的ではあるだろうけど、ほんともう止めてくれ。許してくれ。僕は男なのだ。僕はなんにも持ってやしないけど、生物的なプライドを持つことくらいは許してくれ。
「君って、悪戯するとすごくエッチな顔で悦んでくれるよね」
 勝手なことを言われて、容赦なくスイッチを入れられる。腹の中で、カタマリが急に激しく震え出して、僕は悲鳴を上げる。
「や、あああっ!」
「わ、カワイイ声……君ってすごく色っぽい声してるよね」
 望月は、なんだかうっとりした顔をしている。なんで陶酔しているんだ。お前やはりあれか。サディストなのか。弱者を苛めて感じてるのか。変態だ。





 身体ばっかりびくびく震えて、声が枯れはじめた頃、ようやく望月が僕の中から玩具を抜いてくれた。ベッドにべちゃっと潰れて、全身で息をしていると、あいつは何やらごそごそやっている。
――え?」
 僕は、目を丸くする。望月が引っ張り出してきたのは、さっきまで僕を死ぬかもってくらい苛めていたローターよりも、ずっと大きくて長い、イボイボ付きの棒だった。どう見ても男性器みたいなかたちをしていて、黒光りしている。なんだそれ。すごく嫌な予感がする。
「……なに……それ」
「何だと思う?」
「……ツボ押し器?」
「……なんかすごく君を汚してるって実感が湧いてきちゃったよ。ごめんなさい」
 謝られた。
「え、わ、」
「ごめんね。力、抜いて……」
 太い棒が、僕の中に入ってくる。
「い、や……きもちわる、気持ち悪い、」
 僕がやだやだつってんのに、望月は全然聞いてくれない。僕は走馬灯のように、平和だった学生時代の思い出を蘇えらせていた。
 望月は気さくで優しくて、僕を一人の友人として大切にしてくれていて、僕のはじめての友達で(うちの仲間はあれ絶対友達とは認めない。表では他人のふりをしたい)、そりゃ僕が裏切ったのは悪かったろうけど、なにもここまですることはないはずだ。
 なんではじめての友達が初体験の相手になってるんだ。しかも男だ。前まで望月はすごく僕に優しくしてくれたのに、今は、
「イイ?」
――や、っ、やだぁあ……っ!」
「そっか……ねえ、じゃあ僕の、舐めて」
「……え」
「気持ち良くしてくれたら、抜いてあげるよ」
 そんな事を言いながら手錠に繋がれているチェーンを緩めて、僕を乱暴に引っ張り起こして、跪かせるみたいな格好でちんこ口の中に突っ込んできた。
 僕は抵抗することもできずに、涙目で、というかもう情けなくて泣きが入りながら、望月に言われるままに舌を動かしたり、吸ったりしながら性器を舐める。……惨め過ぎる。
「あ……うんそう、君、ホントエッチだね」
 エロいのはお前だろうが、この種馬。ホクロ男、マフラー星人、オールバック、デコ、ジン予備軍。お前の触覚抜いてやろうか。――とかいう罵詈雑言を心の中で思い浮かべるのだが、口のなかがいっぱいに詰まってて、口がきけない。
 まさか僕の残り少ない人生のうちで、他人のちんこを咥える羽目になるとは思わなかった。死にたい。
「ん、もう、いいよ……顔、上げて」
 やっと解放されるのか。僕はほっとして顔を上げた――ところで、望月に押し倒された。
「ん、にゃ……」
 尻に嵌まっている棒を何度か抜き差しされた後で、脚を開かれて、――確かに、棒は抜いてもらったけど、
――は、ぁあああっ……!」
 今回も、望月にちんこ突っ込まれた。お前僕の尻を何だと思ってるんだ。女子みたいに子宮とかはないんだぞ。
「や、あ、あっ、うごかな……い、で、もちづ、ひど……」
 ただでさえ硬くて熱くて、僕をぐだぐだに溶かしてしまいそうなのに、急に擦られるからたまったもんじゃない。僕は悲鳴を上げて、泣きながら恨み言を言う。
「あ、あ……抜いて……くれるって、言ったじゃん……うそ、つき、ぃいっ、」
「ごめん、ごめんねっ、どうしても、君のなかでイキたいのっ、」
 お前、だから僕の中に射精したって、子供なんか、
「あっ、あ、ふ、……ひゃ、ああっ」
 考えている間に熱いものが腹の奥に叩き付けられて、僕は仰け反る。二人で抱き合うかたちでびくびく震えてしまう。
 悔しいけど、僕は気持ち良くされると、成すがままに流されてしまう。
 ああもう、こんなのお前、僕がもし女子だったらどうするんだ。一体何人子供を孕まされてるんだ。この種馬が。
――えっ?」
 心の中で恨み言を綴りながら望月を睨んでやると、また腹の中を満たしていく感触がある。僕は赤くなって、青くなって、望月にほとんど泣き付きたい心地で「あの……」と切り出す。
「え、ちょ、やっ……望月、また硬く、」
「うん、ごめんね」
 いや「ごめんね」じゃない。
 僕が何か言う前に、望月がまた動き出す。腰を進められて、引かれて、僕はその度に甲高い、女の子みたいな声で喘いでしまう。
「だめ、……っは、あぁあ、も、……だめ、ゆるし、――
「許してあげない」
 うっとり笑った顔で、とろんとした目で、望月が言う。
 ああこいつまたちょっとキレてる、と僕は色々なものを諦める心地で思いながら、身体の奥まで開かれていく。






後日、反省会
(アパートの一室、ちゃぶ台を囲んでごはんにお湯を注ぎながら)



「えー、反省会を開こうと思います。今日の反省メンバーは……全員だよこの野郎」
「タカヤ、カオナシめっちゃ怒ってんで……」
「はい。先日彼を囮にして我々三人で逃げたのが悪かったんでしょう」
「所詮あいつはトカゲの尻尾のポジションでしょ。どうでもいい」
「聞こえてるんだよお前ら。お前らも次捕まって、僕の痛みと苦しみと恍惚の一割でも味わってみろ。あいつらの拷問受けてみろ。人生観変わること間違いなし」
「恍惚って……気持ち良かったんかいな。エッ、気色悪」
「……あいつらのリーダーは卵を産み付ける時、相手に逃げられないように強い快楽を感じるエキスを注入するんだ。恐ろしい……発狂するかと思った……」
「元々キチ○イのカオナシが発狂するほどの成分を……何と恐ろしい……」
「た、卵産みつけられたんかっ?! だ、だ、大丈夫なんかっ!?」
「いや……僕は多分もうだめだ。何とか奴の魔の手からは逃げ出したが……おそらくここまでだ。みんな、今までありがとう、楽しかったよ……」
「カッちゃん……!」
「カオナシ兄ちゃーん! いやや死なんとって! わしらみんな揃って滅び見よて約束したやんかー!」
「カオナシ……貴方の仇は必ず……でもあの仇に近寄るの怖いですね」
「うん」
「いややあ」
「毎晩長鳴神社にあいつの顔写真貼り付けた藁人形を打ち付けてみるとかどうかな」
「しかし確実ではない。ここは彼らの名義でピザや弁当を百人前ほど注文してやるというのはどうでしょう」
「タカヤ! あなたは天才ですっ!」
「でも、あいつ金持ちだぞ。百人前くらいぽんと払いそうだ。なんか毎日ハンバーグ食べてるって……」
「なんやて?!」
「生意気……」
「我々と彼らの力の差は、そういうところから生まれて来るのですね」
「くっ、ハンバーグかいな……」
「食べたいな……」
「腹減ったな……」
「ですねえ」