十代へ

 大徳寺先生に日記を付けるように薦められたんだけど、正直なところ何を書けば良いのか分からない。まめに毎日日記を書くなんて僕の柄じゃない。毎朝必ず顔を洗って歯を磨くことよりも、シャワーをきちんと浴びることよりも、骨が折れる作業なんじゃないかな。
 こんなことを書くと、僕よりはいくらか綺麗好きの君はまた呆れるのかもしれない。

 君が知っての通り、僕はあまり頭が良くない。ものを考えるのも書くのも上手くない。いつかこっそり僕の日記を読んだ誰かがいたとして、そいつは何だこりゃ、訳が分からないなと首を傾げてしまうのかもしれないね。
 先生はそう気負うことはないと言った。やりにくいようなら、声を届けたい相手へ向けて書くといいとも言った。
 だから僕は十代へ向けて書こうと思う。僕から君への手紙だ。僕は君が大好きだし、君に話して聞かせたいことなら毎日沢山沢山あるんだ。
 今晩ベッドに入って、明日目が覚めたら潜水艦に乗るよ。いつも港に停まっていた、あの鉄でできた大きな鯨みたいな乗物さ。
 この街の外に出るのは初めてだ。とっても楽しみだよ。君も一緒に行けたらもっともっと楽しかったろうけど、こればかりは言ったってしょうがないものな。

 君はもういないけど、僕は元気でやってるよ。そのことが少々腹立たしくもある。
 外に出た後のことはまた明日ね。ばいばい、おやすみ。

◆◇◆

――大丈夫にゃ? うなされてたようにゃ」
 身体を揺り起こされて、目を覚ますと、大徳寺先生が心配そうに僕の顔を覗き込んできていた。僕の背中にはびっしりと冷たい汗が張り付いていた。悪い夢の余韻が、まだ頭の上のほうでもやもやとした黒い霧のようなかたちでうずくまっていた。
 ひどく喉が乾いていることを訴えると、先生は冷蔵庫から出したてのミネラル・ウォーターをくれた。冷たい水が喉を潤すと、いくらか身体の弛緩が解けたように思えた。
 猫のファラオは悪夢にうなされて飛び起きた僕のことはお構いなしに、ハンモックの上で身体を丸めて眠っている。時折痒そうに後ろ脚で耳の付け根を掻いているところを見ると、また蚤に取り付かれているのだろう。洗ってやった方が良いのかもしれないが、ファラオはひどく嫌がって、年甲斐もなく暴れるだろう。僕も風呂は嫌いだから分かる。
 僕が人心地ついても、まだ先生は眉毛を下げて困ったような顔をしていた。だから僕は首を振って少し微笑み、「大丈夫」と言った。全然大丈夫。
「なんでもないよ。多分緊張しているんだ。外へ出るなんて初めてのことだから。それよりもデュエル・アカデミアってところは、まだ遠いのかな?」
「じきに着くにゃ。あと一、二時間てとこにゃあ。島に着いたら少しバタバタするだろうから、今はゆっくりしておくにゃ」
 大徳寺先生は左腕の腕時計を眺めている。彼はふと思い出したように僕の方へ向き直り、「おチビさん、約束は覚えてるにゃ?」と言った。僕は頷き、復唱する。
「先生の言い付けをきちんと守ること。珍しいからって無闇に歩きまわらないこと。それから『あのこと』は……」
「誰にも内緒にゃ」
 大徳寺先生が口に人差し指を当てて、「しい」と言った。僕も頷き、同じようにする。


 ようやく僕達が乗っていた大きな潜水艦――すらも飲み込むくらいに大きな白い船が、広い海の真中にぽっかりと浮かんだ島に到着した。
 十月、深い秋の訪れと共にデュエル・アカデミア本校の新学期が始まる。大徳寺先生は、今日からこの学園の先生になるそうだ。先生は昔から『先生』だったからややこしいけれど、つまり病院の先生から学校の先生になるってことらしい。どっちにしても僕にしてみれば大して変わらない。
 桟橋から港に降り立っても、まだ地面がぐらぐら揺れているみたいだった。「はじめはそういうものなのにゃ。じきに収まるにゃ」と先生が言った。良く使い込まれてぼろぼろになった皮のスーツケースを三つ、何が入っているのかは知らないけど、重そうに抱えている。僕はすぐに両手を差し出した。
「一つ持つよ」
「ありがとにゃ……先生は非力なのにゃ。さて、寮に荷物を運んだら、私は校長先生に新任の挨拶をしに行くにゃ。君はしばらく新しい島を見て回っているといいにゃー。ただし、人気のない場所へは踏み込まないこと。先生は森へ入ったまま長らく出て来られなかった方向音痴の生徒を、少なくとも君の身近な所で二人知ってるにゃ」
「わぁ、いいの? ありがとう先生!」
 素直に嬉しかった。だけど僕は『寮』ってのがどういうものなのか、この時はまだ全然知らなかったのだ。


 『寮』は見晴らしの良い崖の上にあった。赤い屋根で、壁は所々罅が入り、蔦に浸蝕されている。建物そのものが傾いており、かなり傷んでいるようで、次の台風がやって来たらきっともう持たないだろうって様子だった。おそらくもう何年も近寄る人間がいなかったせいだろう、入口の傍には背の高い雑草が生い茂り、森とそう変わりがない。
「ううん、ますます風情が出ましたにゃ〜……」
「先生、前にもここに来たことあるの?」
 僕はそう言いながら、群生したススキを掻き分けて前に進む大徳寺先生の後を、鞄を頭に乗っけて懸命に追い掛けた。この草むらときたら、僕の背丈よりも高いのだ。
 先生は僕の質問には答えず、「まず大事なことは」と言った。
「ひとまず、通り道を作らないことには、不便でしょうがないにゃあ。ねぇおチビさん」
「僕?」
「働かざる者は、食うべからずですにゃ」
 ようよう寮の入口まで辿り着いた大徳寺先生が、慣れた手つきで扉の鍵を開けた。
「先生はそろそろ行かなければならないにゃ。携帯端末は持ってるにゃ?」
 僕がポケットから端末を取り出して見せると、先生は頷いて、「何かあったらすぐに連絡を入れるにゃ」と言う。そしてさっさとスーツケースを穴の開いた壁に立て掛けるなり、後は任せたとばかりに部屋を飛び出して行った。
 僕は見知らぬ場所で一人になって、どうすれば良いのか分からず、しばらく立ちんぼうをしていたが、とにかく与えられた仕事を片付けるべく腕まくりをした。


 寮の一階の入口前に密生した雑草をなんとか片付け、ようよう人が一人通れるくらいの道ができた頃には、すでに日が暮れかけていた。僕は溜息を吐き、腕で額の汗を拭った。僕のこの島へ来て初めての一日は、草刈りで終わろうとしている。
 それでも、水平線の向こうへと静かに潜っていく赤い太陽は、言い様のないくらいに美しかった。蛍光ピンクに染まった綿菓子みたいな雲も、ねぐらへ帰ろうとする鳥たちの黒っぽい群れも、きらきら輝く海面も。
 いつか僕が生まれた街にいた頃に話に聞いた通りだった。
 作業が終わると、僕は今晩眠る部屋の物色を始めることにした。納屋に仕舞ってあった草刈り鎌を雑草の束の上に置いて、蔦だらけの階段の手摺りに掴まり、慎重に足を掛けた。鉄板は錆び付き、茶色く変色していて、今にも底が抜けそうだったけど、なんとか僕一人の体重くらいは支えてくれそうだ。用心しながら二階へ上がり、いくつもある部屋をひとつひとつ覗いていく。
 このおんぼろ寮、部屋はいくつもあったけど、誰も住んでいない。一階の部屋を見て回った時は、どれもが埃だらけの廃屋そのものの様子だった。ただ二階の端っこの一室だけが、他の部屋と少し様子が違っていた。
 いくらか埃が取り去られ、まだかろうじて人の気配というものが残っていたのだ。この寮が放棄される直前まで誰かが使っていたのかもしれない。
 前の住人がおそらく寝起きしていた備え付けの三段ベッドの一番下の段に、まだ瑞々しい小さな花束が乗っていた。
(最近誰かがここに来たのかな?)
 花は屋根とお揃いの赤色だ。もう元気がなくなり掛けていたから、今日僕が島に来るよりも前に誰かが置いて行ったものだろう。こんなぼろぼろの建物に、特に用事もなく、好き好んでやってくる物好きな人間がいるとは思えなかったから、もしかしたら一度島の様子を下見に来た大徳寺先生が置いたのかもしれない。
『……クリクリ〜!』
 ふいにふわっとした茶色い毛玉が僕の目の前に現れ、嬉しそうにベッドに小さな身体を擦り付けた。
「あ、おい。どうしたんだよ」
 こいつは僕が首から下げているお守りのカードの精霊だ。ハネクリボーと言う。
 ハネクリボーは随分御機嫌な顔で、僕に向かって頷いて見せた。
『クリ〜、クリ、クリクリィ〜』
「なんだかすごく嬉しそうだけど、何を言ってるのか分からないよ。お前の言葉は僕には難し過ぎるんだ」
 ハネクリボーが残念そうな様子で項垂れる。僕は目を閉じて頭を振り、ベッドに寝転んだ。染みだらけのシーツは、さっき外で嗅いだ日向の土と同じ匂いがした。
 僕は花びらを散らさないようにそっと赤い花を摘み、どこかに花瓶があれば良いんだけどなと考えた。こいつもきっと喉が乾いているに違いないのだ。
 そうしていると急に表が騒がしくなってきた。大徳寺先生が帰ってきたのかもしれないと僕は考えたが、それにしちゃ靴音が多い。窓を開けて外の様子を覗こうとしたんだけれど、窓枠が錆び付いてなかなか開かない。
 どうしてか、表でいくつか悲鳴が上がった。

「ま、窓がガタガタ言ってるぅ!」
「バカ、風だよ。びびってんじゃねぇよ。おい誰か見に行けよ、……そうだツトム! お前行けよ! 幽霊なんかいないって言ってたの俺聞いた!」
「行け、ツトム! 安心しろ、骨は拾ってやる!」
「ええ、ぼくだって嫌だよ……」
「デュエル弱いくせに、口答えするなー!」

 僕は窓を開けるのを諦めて、ドアの取っ手に手を掛けた。ちょうどそのタイミングで表からドアが開き、僕と同じ位の年頃の少年と鉢合せをする。
「うわぁ!」
 少年は僕と顔を合わせるなりひどくびっくりした表情で、ぺたんと尻餅をついた。階下からハラハラした顔で見上げてきていた、彼の友達らしい他の少年達が、また悲鳴を上げながらばらばらと散っていく。
「お化けだぁー! ツトムが食われる!」
「……え?」
 僕は訝しげな顔をしていたと思う。訳が分からない。
 とにかくしゃがみこみ、僕の目の前で腰が抜けているらしい少年の顔を覗き込み、「君誰?」と訪ねた。
 少年は僕が喋ったことが意外だったらしく、目を丸くしている。失礼な話だ。僕は銅像でも壁でもない。彼は僕を右手で指差し、左手で同じように自分の顔を指差し、もごもごしながら言った。
「えっ? あれ、君、もしかしてぼくと同じこのアカデミアの生徒?」
「生徒じゃないよ。僕の叔父さんが新学期からここの先生になるんだ。だから助手とか、雑用係とかそんなもん。どうやらこの寮に住むことになったらしいんだけど、どうも人が住める状態じゃないから、掃除してたとこ」
「……なんだ、びっくりした」
 少年は随分ほっとした様子だった。それから不憫そうに僕を見上げ、おんぼろ寮と見比べて「ここに住むんだ」と言った。彼が言いたいことはなんとなく理解できた。
 僕は彼の手を掴んで引っ張り起こしてやり、ふと思い付いて尋ねた。
「えっと、ツトムだったっけ……さっきそう呼ばれてた。悪いけど君、花瓶かなにか持ってないかな。何でもいいんだ。花を生けられそうなもの」
「花瓶? なんでそんなものを探してるのか知らないけど」
 ツトムは良く分からなさそうな顔だったが、鞄からグレープ・ジュースの空き瓶を取り出して僕に差し出した。
「こんなのしかないけど、これ使えないかな」
「充分。ありがとう」
「あ、うん。……あのさ、君、片付けの最中だって言ってたよね。その……ぼくも手伝おうか? この寮の掃除なんて、一人でやってちゃ何日も掛かるよ、きっと」
 ツトムが僕の方を自信が無さそうに見て言う。人見知りの気があるのかもしれない。ともかく申し出はありがたかったから、僕はすぐに頷いた。


 ツトムは『デュエリストの聖地』童実野町の出身なのだそうだ。何年か前に街を救ってくれたヒーローに憧れて、その男が当時在籍していたこのデュエル・アカデミアにやってきたらしい。
「あの人みたいな赤い制服を着たかったんだ。でも彼がいたオシリス・レッドの寮は今じゃこんな感じ。廃寮になっちゃって幽霊が出るって噂もある。学園七不思議のひとつ、誰もいない元レッド寮の建物から囁き声が聞こえる。怪奇名所だよ。新入生は度胸試しに回らされるんだ」
「僕は何も聞かなかったけど。君とおんなじで、肝試しに来た人がなにか喋ってたんじゃないかな」
 僕はツトムに貰った空き瓶を丁寧に濯ぎ、冷たい水を汲んで赤い花を挿した。「それはなに?」とツトムが訊くから、説明をしてやると、彼は苦い顔になった。
「なんだか気持ち悪くないかな……お墓とか交通事故現場とかに良く供えてある花みたいだよ。きっと昔この寮で死人が出たんだ。この寮の他にも昔沢山の行方不明者が出た呪われた寮なんてのもあるらしいし……」
「花は何も悪いことはしていないよ。僕の友達がね、すごく花を大事にする人だったんだ。僕はあの人を尊敬してる。だから僕も花を大事にする」
「でもお化けが出るかもしれないよ」
「ふーん」
「ふーんって。それだけ?」
 ツトムが口を尖らせる。僕が気味悪そうな顔をしたり、悲鳴を上げたりすることを期待していたのかもしれないが、思ったような反応が返ってこなかったことが不満らしい。
 そんなふうに話し込んでいるところに、ようやく大徳寺先生が帰ってきた。階段の下から大きな声で僕の名前を呼んでいる。
「先生、こっち!」
 僕はさっき一度サレンダーした建付けの悪い窓を今度こそ開けて顔を出し、腕を振って見せた。先生はすぐに僕に気付いて、板が抜けそうな階段をおっかなびっくり上がってくる。僕よりもいくらか体重がある大徳寺先生がはたして無事に階段を上りきれるのか、一瞬不安になったが、大丈夫だったようだ。先生は扉が開け放しになっている部屋の入口に立って腕を組み、感慨深そうににっこりした。
「ご苦労さんですにゃ。お陰で行きよりも大分楽ができましたにゃあ。ところでそちらは?」
 先生がツトムを示して不思議そうに首を傾げている。「生徒だって」と僕が答える。
「新入生。この寮に肝試しに来たらしいよ」
「心外ですにゃあ! ここは確かにおんぼろだけど、お化け寮なんかじゃないのにゃ。このデュエル・アカデミアが誇る数多くの有名人を生み出した、伝統ある元祖レッド寮なのですにゃ。I2社でカードデザイナーとして活躍する前田隼人くんに、有力なプロデュエリスト万丈目準くん、お兄さんと一緒に新たなプロリーグを創立した丸藤翔くんも、一時期この寮で生活をしていましたにゃ。そして――
 大徳寺先生が人差し指を立てて、講義でもするような口調で言う。そして糸みたいな目を更に細めて、意味ありげにふっと微笑んだ。
「そして我らがヒーロー、万年落第生だった遊城十代くんは、三年通してこの部屋の、ちょうど今君達が座っているベッドを使っていましたにゃあ」
『十代(さん)が!?』
 僕とツトムの驚き声が重なる。僕らは二人でぱっと顔を見合わせあった。頬が紅潮しているのが自分でも分かるし、ツトムもおんなじような感じだった。
 僕はともかく、なんでツトムまでそんなに興奮しているんだろうと訝っていると、ツトムは目をきらきらさせながら、「感激です!」と叫ぶように言った。
「ぼく、あの人に憧れてここへ来たんです! ほんとだ、幽霊寮なんてとんでもない。あの世界を何度も救ったヒーロー、十代さんの部屋が見られるなんて!」
「ここが気に入ったのならまた遊びに来ると良いですにゃ。その時に、この子……私の親戚の、ユウキくんというんですにゃ。この子と遊んであげてくれると嬉しいにゃ。良かったら友達になって欲しいにゃあ」
 大徳寺先生が僕の頭をぽんぽんと叩いて言う。僕は微笑み、「よろしく!」と右手をツトムに差し出した。ツトムはまだ興奮した様子で、僕の手を強く握り返して頷いてくれた。
「よろしく、ユウキ!」
「お友達ができて良かったにゃあ。さ、ツトムくん、君はそろそろ現役レッド寮へ戻るにゃ。デュエル・アカデミアは時間にシビアですにゃ。遅れると夕飯を食いっぱぐれるにゃ」
「あ……そうだ。じゃ、また明日!」
 ツトムがぱっと顔を上げ、慌しく部屋を出て行く。入口を出しなに、彼はちょっと振り返って、照れ臭そうに手を振ってくれた。
「さて、我々も夕飯に……ん、これは?」
 大徳寺先生が僕の肩にぽんと手を置いて、ふと首を傾げた。ツトムに貰った簡単な花瓶に挿されている赤い花を見つめている。
「センニチコウですにゃ。島に生えてる花じゃないにゃあ」
「これ、僕がこの部屋に入った時にはもうあったよ。その、十代の……ベッドの上にさ。ツトムはお供えの花みたいだって言ってたけど、このまま枯れさせるのも可哀想だから」
「そうですにゃ……ありがとなのにゃ」
「あれ、やっぱり大徳寺先生が?」
「いや、私じゃないにゃあ。それより腹ごしらえにゃ。気になるならあとで花の図鑑でも見てみると良いにゃ」
 先生はそう言って僕の肩を押し、蝶番が寿命を迎えかけている扉を開いた。外はもう薄青く、夜の気配に染め上げられていた。空にはいくつも星が輝いていて、まるで僕が育ったあの海の底の街のようだった。


 大徳寺先生が図書館で借りてきてくれた花の図鑑をぱらぱらめくっていると、ちかちか点滅する橙色のランプのせいで少し目が疲れた。僕は机の上の赤い花と図鑑を見比べて目を眇めた。特に気になる訳ではなかったけど、好奇心はどんな種類のものにも向けられるべきだというのが、大徳寺先生の持論なのだ。
「『セ』行、センニチコウ……ああ、あった。千日紅。背丈はわりと高い。花は五月から九月に掛けて咲く。ドライフラワー向き。花言葉は、」
『クリ、クリィー!』
「ん、何だよハネクリボー。ジャマするなよ。それともお前も興味があるのか?」
 ふっとハネクリボーが現れて、僕の頭の上に陣取り、羽根をばたばたさせながら、興味深そうに図鑑を覗いている。僕は指先でハネクリボーの半透明の身体を突付き、続きを読み上げた。
「変わらぬ愛情」



 俺は今も何も変わらない。君がたとえどんな姿になろうと、君のことを――



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