ぐや




『……あの、夕飯、作ったんだ。良かったら、どうかな』





『おまっ、ちょ、これ張り切りすぎじゃね? パーティかよこれ』





『ん。がんばった。もう卒業式だから』





『お前、卒業式は明日よ? ちょっと気ィ早くね? はしゃぐのは明日に取っとけよ。なんかさ、またさ桐条先輩が寿司ゴチソーしてくれるってよ!』





『……うん。ごめん。俺の我侭っていうか、今日が、良くて。今日しかなくて』





『……どうしたのよ? ンな思い詰めた顔しちゃって』





『俺、明日になったら、もうみんなに会えなくなるんだ』





『……は? ちょ、待て待て待てよ。いきなり、それ、何言っちゃってんのそれ? そんなことあるわきゃねーじゃん。お前オレらと一緒に三年上がるんだぞ。卒業するんじゃねんだ。まだ一年ある。OK?』





『ん。明日、お父さんが迎えにくるんだ。俺、こんな身体だからさ、みんなと一緒に三年上がれない。引っ越すんだ。ちょっと、遠くになる』





『あ……そ、そ、か。ガッコ、お休み、すんの? しゃ、しゃーねーよな、おま、その身体だもんな……早く治して帰って来いよ。オレっち嫌だぞ、オレより頭良い後輩とかできんの。――あー、ちょい待ってろ。みんな呼びつけっから。あ、ゆかりッチ? オレオレ。今すぐ帰ってき。桐条先輩そこいる? 真田さんは? うん、引っ張って連れて帰ってきて。至急、急いで。ああえーちゃん、お前はちょい黙っててな? いーから、うん』




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