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壬生怪談・百物語




〇一六・恐怖(藤堂)★読み上げ音声有★




 怪談話? 品切れだ。
 スズランのところにでも行け。坊主ならば、何かと詳しいだろう。
 お化け話でなくてもいい? 「怖れ知らずのお侍様が、これまでの人生でいちばんギャーッとおっかねぇと思ったことはあるかい」、だと。
 そうだな……。

 うちの組の者がお体の弱い容保公に、「毒見は済んでいるので」と副作用のひどい滋養強壮薬を飲ませて、仁王像か黒猩々かみたいな筋骨隆々の大男にしてしまったときか。
 それとも、真っ青になった私の横で、「すっごい筋肉ぅ。カタくてモリモリ。カタモリだけに」と、のんきな顔でほざいた奴がいたときか。

 あの浮世離れしたバカチンふたり組、どちらを先に粛清するか本気で悩んだ。
 幸い、容保公はなぜかお喜びになり許されたが、私は後にも先にもあの時ほどの恐怖を覚えたことはない。




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