……(目次にかえる)
怪談話? 品切れだ。 スズランのところにでも行け。坊主ならば、何かと詳しいだろう。 お化け話でなくてもいい? 「怖れ知らずのお侍様が、これまでの人生でいちばんギャーッとおっかねぇと思ったことはあるかい」、だと。 そうだな……。
うちの組の者がお体の弱い容保公に、「毒見は済んでいるので」と副作用のひどい滋養強壮薬を飲ませて、仁王像か黒猩々かみたいな筋骨隆々の大男にしてしまったときか。 それとも、真っ青になった私の横で、「すっごい筋肉ぅ。カタくてモリモリ。カタモリだけに」と、のんきな顔でほざいた奴がいたときか。
あの浮世離れしたバカチンふたり組、どちらを先に粛清するか本気で悩んだ。 幸い、容保公はなぜかお喜びになり許されたが、私は後にも先にもあの時ほどの恐怖を覚えたことはない。
【前の話にもどる ・ 次の話にすすむ ・ 目次にかえる】
この小説は二次創作物であり、版権元様とは一切関係がありません。無断転載・引用はご容赦下さい。−「壬生怪談・百物語…紫鈴堂・えしゅ 2023」−