見れば見るほどそっくりだねえ、僕の知ってるソウゲンちゃんに。
さっきは破廉恥なんて言ってごめんね。こっちのソウゲンちゃん。
うちのソウゲンちゃんは、いつも背筋伸ばしてシャンとしててね、着物がはだけてるところなんて見たことないの。だからびっくりしちゃったわけ。
こっちのソウゲンちゃん、股引きとかはくんだねえ。足だってあぐらかいちゃうし、なんだか僕みたいだよね。えへへ。
僕のソウゲンちゃんとの違いといえば、顔つきがやわらかいっていうか、善い人の顔してるっていうか。
あっ、僕のソウゲンちゃんが悪人面ってわけじゃなく……ん? うーん、初めて会ったときはちょっとそうだったかも。イヒヒ、って悪そうな笑い方だったし。
新選組に入ってから、どんどんお顔が優しくなっていくんだよね。僕は今の優しい顔したソウゲンちゃん好きだな。
よく見てるねって? そりゃね。僕は、僕のソウゲンちゃんが大好きだもの。
「そちらのスズラン君は、ずいぶん沢山喋るようなのです」
ほえ!? スズラン君。新鮮な呼ばれ方しちゃった……。それもいいかも……。
「あなたの世界の私には、大切にされていますか」
えーと、そりゃもう。ソウゲンちゃん優しいもの。
いつも夜遅くまで仕事してて働き者で、どんな人にも分け隔てなくみんなを助けてあげてて、町の人にも評判のお医者様なのよ。
あのー、つかぬことを伺いますが、こちらの僕とは……。
「お察しの通り、お付きあいをさせていただいております」
やっぱり。僕ならどんな出会い方をしても、ソウゲンちゃんのこと好きになるなって思うんだよ。納得。
えっと、僕のところもね、そう。
ソウゲンちゃん、僕といっしょにいたいって言ってくれたのよ。
見てて面白いから。興味深いからずっと観察していたいって……なんか子供がいちばん強いカブトムシ選ぶみたいだけどさ、うれしかったんだ。
ただ、そういう理由で相手を選んじゃうのは、なんだかもったいない気もするよねぇ。
世の中に綺麗な娘さんはたくさんいるんだよ。彼が知らないだけで、まだふさわしい人に出会えてないだけかも。
僕のソウゲンちゃんはね、今までずっとひとりで書庫にこもって、書にしか興味なかったんだって。お家の事情がなにかあったのかもしれないけど、その辺は僕もよくわかんない。
だからかな、世間知らずでぽやーっとしたとこあるのよ。あんなに素敵な人なのに、僕が初めてできた良い人なんだっていうし。
新選組の替え玉になって、僕ら別人に生まれ変わったじゃない。
ソウゲンちゃんもそう。人とのかかわりが増えていって、ソウゲンちゃんが好きな人もこれから増えていく。ソウゲンちゃんのことが好きな人もね。
それこそソウゲンちゃんが親御さんに紹介しても恥ずかしくないような、かわいいお人とこれから出会って、ビリビリッと雷に打たれるみたいな恋に落ちちゃったりするかもしれないわけ。
こんな話知ってる?
──とある藩主の赤子が乗った船が難破して、無人島にたどり着いた。
家来たちに見守られて、赤子はすくすく成長する。やがて年頃になった若君は、島で唯一の女人である乳母に恋をする。
乳母は恐縮しちゃって、海の向こうからお迎えがくれば、若君にお似合いの娘がいくらでもいるし、自分のような年かさの女は、美しく聡明な若君にはふさわしくない……そう説得するんだけど。
乳母は結局若君の熱意に押し切られちゃって、ふたりは良い仲になるんだ。
そのうち、海の向こうから迎えの船がやってきた。若君と家来たちは、無事もとのお城に帰ることができた。
城には、若君にお似合いの若い娘さんたちがわんさかいた。
若君が好いていた乳母は、娘ざかりの女の子たちの誰と見比べても老いて醜い。それで若君は騙されていたと怒り出し、島では良い仲だった乳母を城から追い出してしまう。
この若君は身勝手だけど、これぞ人間だなーって感じするよね。
僕はソウゲンちゃんが好き。
だから彼には、育てたいカブトムシ選ぶみたいにじゃなくて、その人のことがかわいくてたまらなくって、好きで好きでキュンキュンときめいちゃうような女の子に出会えたらいいなって思うよ。僕がソウゲンちゃんを好きになったみたいにね。
いや、なるだけゆっくりな運命の出会いだったらいいな……ってね、思うんだけど。うん。往生際が悪い。
いまの話の若様と乳母みたいに、彼が隣に並ぶとお似合いなかわいい女の子に出会って、本当の恋をわかっちゃって……「好いた方と祝言をあげることになったので、お付き合いはなかったことに」って、いつ言われるか冷や冷やしてるんだ。
おわっ。どったの、こっちの世界のソウゲンちゃん。おめめ開いたんだね。
ずっと笑顔で、目を細めてたのが、急に僕のソウゲンちゃんそのもののお顔になるから心臓に悪いよ。
そちらの私を殴ってもよろしいか、って。いいわけないでしょ落ちついて。案外気性が荒い。
僕は充分幸せなの。
彼の心が育っていくところを、これからも大切に見守っていたいんだ。