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障子の外でうごめいている、バカ星に化けた何者かが顔を寄せたところを狙い、目を突く。 「サクヤーーーッ」 案ずるな。藤堂。自分はやるとなれば、仕留め損なうことはしない。 「なんでぞういうごどすんの。君、いまぢっぢゃいがら危ないっで。ジッどじででっで、藤堂ぢゃん言っだじゃん……」 ふがいない坊主はそこでじっとしておけ。泣き顔がうるさい。 「スズラン殿。そこにいるのですか。もう安心です。さあ、開けてください」 今度は医者の声。背の高い影。……これも本人ではないな。 「いくら物の怪とはいえ、勝手にソウゲンちゃんの姿に化けて喋られるのは、いい気持ちがしないね」 「お迎えにあがりました。この騒動が終わったら結婚しましょう」 「開けていい?」 「ダメ」 藤堂。チョロすぎるバカ坊主を取り押さえておけ。 「あの天然理心流の構え。近藤さんに違いない。皆さんが守ってくださっているのだな。なんと心強い」 和泉守兼定を振るう男の影。あれが亡き土方歳三だろうか。 音がしなくなった。 「僕が見に行こう。いざとなったら念仏唱えてやり過ごせるかもだし。『難しはや、行か瀬に庫裏に貯める酒、手酔い足酔い、我し来にけり』──酔っ払いだから大目に見てよ、ってね。この騒ぎが終わったら、ふたりにおいしいきつねうどんを作って振舞うよ。あと結婚する」 「やると死ぬ確率がグンと上がる行動を、わざわざ並べていくでない」 「白状するとね、実は藤堂ちゃんのおやつのあんころもち、勝手に食べたの僕なんだ」 「そればかりは絶対に許さぬ」 「あれ? 奥のほうでなにか物音がしたような……。気のせいかな。ちょっと見てくるね」 「あやつめ、不吉なことばかり言い残していきよった。大丈夫なのか」 あのまま帰ってこなくてもいいんじゃないのか。 「サクヤ」 訂正する。あれだけ役を揃えて出ていけば、逆に殺しても死ななさそうだ。 |
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−「壬生怪談・百物語…紫鈴堂・えしゅ
2023」−