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陸地で待機していた砲撃担当の者たちが、先の爆発のあと、すぐに船を出してきた。 アキラの次に、自分が引っ張りあげられたとき。 「サクヤ殿。ご無事ですか」 声をかけてくる医者に頷く。自分には、『これ』しか渡せない。 ──坊主だ。 スズランの頭だ。 「たとえ頭だけでもスズラン殿を見つけて下さって、感謝するのです。おかわいそうに、こんなに欠けてしまわれては、不便でしょう」 ソウゲンが、両手で大事そうにスズランの顔を抱えて、「生きていますか、どこか痛みますか」と話しかけている。 ──と思ったが、生首の目がカッと開いた。 「わああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」 ……と、スズランの首が悲鳴をあげるものだから、まわりの者たちも同じく。 「わああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」 ……と叫んで、船をひっくりかえさんばかりに、各々が端に引いた。 「巨大鮫がさぁ、ぐわああああーっと開いたお口、めちゃくちゃ怖かったよぉ! お師匠さんにもらった体、バリバリって食べられちゃったよう……! せっかく僕に譲ってくれたのに、ひとつしかないのにぃ! ひどいよひどいよ、うええええええん……」 「それは困りましたね。しかし、まずはスズラン殿が元気そうで何よりなのです」 は? 生きているのか。なぜだ。意味がわからん。 「ソウゲンちゃんが僕にくれたエレキテル錫杖も、ごめんね、バッキバキにされてビリビリードッカーンって壊れちゃったよぉ……」 「かまわないのです。エレキテル錫杖一本と引き換えに、皆の命が救われ、あの人喰い鮫を退治することができたと言えるでしょう。魂を宿しておられた斎藤一殿も、満足しておられるのでは。鬼神丸国重はまだまだ余分の刃が残っておりますので、そちらを利用して新しいエレキテル錫杖を拵えましょう」 本物の斎藤一は、そろそろ医者になにか文句や泣き言を言っても良いと思うぞ。 「キッッッモ」 馬鹿星が、目覚めたて一番に悲鳴をあげた。 「ああああん、斎藤一さぁん、頭が重くて立てないよ。ソウゲンちゃん、ごめんちょっとそこ持ってて、耳のあたりを、こう支える感じに」 ソウゲンが何でもない顔をして、そっと優しくスズランの頭を支えている。 狐だ。 「毛が、染まっちゃってる……。長いことかぶりものしてたせいで、僕の毛並みが血と泥色に。荒れてごわごわになっちゃってる。嘘でしょ。これじゃまるで狸よ。 「もちろんなのです。あなたはいつでもかわいらしいですよ、今このお姿も」 「やったーーっ」 ドロドロに汚れて、もはや何だかわからぬ小動物が、腹を見せたままコロコロと、右に左に揺れて蠢いている。 本当に意味がわからないものの、坊主は一応生きていたようだ。 「ああ、斎藤一さんのお顔が。カサカサと乾いて干物のようになっていく……」 藤堂が、ヌケガラになった斎藤一の首を抱えて右往左往している。 「お風呂入りたいよう」 狐がしくしくと泣いている。たしかに。 「皆そうだって。とりま風呂いこ、風呂」 馬鹿星がゲッソリと疲れた顔で提案して、皆で頷いた。 |
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−「壬生怪談・百物語…紫鈴堂・えしゅ
2023」−