この歳になって、まぐわいなるものを初めて致しました。
お相手は、添い遂げようと心に決めたスズラン殿なのですが、お互いに多忙なうえに、ふたりきりになれる機会がそうなく……いいえ、それは言い訳なのです。
無理をして体を繋げずとも、寄り添い、語りあっているだけで満足していること。そして、こちらのほうが理由としては大きいのですが、あの方に無体を働き、傷つけてしまう予感がしたのです。
ご存じの通り、小生の一族は皆長身痩躯なのです。小生も幼少のころより、同年代の子どもたちに、まるで杉の木のようだと見上げられながら育ちました。
スズラン殿と比べますと、ゆうに頭ひとつ分は背丈があるのです。ふたりで向かいあい触れあうと、ちょうどあの方が頭の後ろで結んではねあげた髪の先が、小生の顎に触れるのです。その心地がなんともくすぐったく、愉快なのですが。
そんなふうに、スズラン殿は小柄な方です。比べる相手が小生や、荒事と鍛錬を繰り返し体を大きくしてきた新選組の男たちなので、正確な比較ではありませんが。
むしろスズラン殿は、とくに小柄な藤堂殿などと比べますと、一般的な成人男性としては平均的な体格でしょう。
大きい体で小さい者を抱けば、当然ですが潰してしまうのです。
小生はスズラン殿に触れようとする際に、時折、力の加減がうまくゆかぬことがあるのです。
体というものは心のままに動かぬものだと、最近ようやく腑に落ちてまいりました。好いた人に触れることには、なにか筋肉の動きを狂わせる作用があるのかもしれません。
最近ですと、日が落ちたあとに床の中で触れあうことにも馴染んでまいりまして、そういったことは少なくなりましたが。
もしも、ということがあります。
スズラン殿は、いつも優しい触り方だと嬉しそうに言われますので、あの方からの信頼を損ねるような真似はしたくないものです。
以前、あの方に、気に入りの春画を見せていただきました。
人間の男が、雌の狐と性交している浮世絵です。絵のなかの雌狐は成獣で、人間の男のマラを、どこ吹く風という顔で受け入れておりました。
それは絵物語なので、正しく参考になりはすまいが。
あの方の本性は、毛色の珍しい小さな狐。もしも小生が狐に化かされ、人の姿だと認識しているあの方を抱いたとして、実際は鞠ほどの大きさの身を、己のマラで突いていたとすれば……。
それこそ尻穴が爆発した狐の話のように、無事ではすまないでしょう。
先日、不安に思って一度ご本人に確かめてみたところ、そこらへんはうまくやってるから、まあ心配はしないでよと、笑って言われました。
あの方のお体の仕組みがどうなっているのやら、小生はわからないことが多すぎます。
たいへん興味深いので、一度開いてみたいものですし、スズラン殿の口から、己が死んだのちは体を開いて調べてかまわないし、余った毛皮は襟巻にして使ってほしいと聞いています。
しかしながら、その機会はこないでしょう。
あの方は危険に敏い方ですし、お渡ししたエレキテル錫杖がありますので、めったなことにはならないのです。
それに小生も、そのような機会がこぬことを、心から願っているのです。
あんなにも知識欲を刺激するお方です。在り様に、仕組みに、小生は大変に興味を抱いておりますのに……。
スズラン殿の躯を開いて仔細を調べるよりも、あの方のことがなにもわからぬままでかまわぬ、隣に座りとりとめのないことを喋っていてほしいと思うのです。
昔の小生が今の己を見ましたら、おそらくひとつも理解できぬという顔をしたことでしょう。
ですので、小生がスズラン殿を開くことも、あの方を襟巻にすることも、この先ありますまい。
むしろこの身が躯になって、あの方に人の形のかぶりものとして使っていただくほうが、あり得る話でしょう。
背が高い体なので、きっと便利だと言ったとたんに叱られましたが。いやはや。
しびとを弔うために数多の祈りを口ずさみ、誰の生き死ににも頓着せぬあのお方が、人の命を惜しまれるという珍しいお姿を見ました。
その時はなにか、不思議と、くすぐったくぬくい心地になったものです。
誰かに、かけがえのないもののごとく、大切に扱われるということは、とても心地の良いものなのですね。
夜ごとに床のなかで、スズラン殿の体を、順を追ってすこしずつ開いてゆきました。
もともと性交に使うところではない穴を使うのです。ひとつ間違えば、体にさわりがでます。
まずは腰湯に浸かっていただき、体をあたためます。
最初は、この小指を。ぬめり薬をからめながら、スズラン殿のお尻の穴に挿入します。
無理はせず、日をまたぎながら、挿れる指をいれかえてゆきます。
小指に慣れれば、薬指に。次は人差し指、中指。
最後に親指まで入るようになりますと、次は棒薬といって、木の棒に薬を染みこませた綿を巻いたものを挿入します。
苦痛を与えぬよう、注意をはらっておりましたが、それでも楽な行為ではありません。
スズラン殿は、「旅行となると、出かける日だけじゃなくて、前準備をするのも楽しいのとおんなじよ」と笑っておられました。
仕事や鍛錬などは面倒がって、サボって昼寝をしていることもある方ですが、助平なこととなると驚くほど辛抱強く、また勤勉になられるのです。
先日、大坂の薬問屋へ出かける用事がありましたので、帰りにふたりぶんの宿をとりました。
性交に十分なほどに、スズラン殿の尻の穴は、広がるようになっておりました。
さあさあ抱いてくれと腕を引いてせがまれていると、長く生きてきた己も、気持ちがまるで若いころに戻ったようでした。いやはや、お恥ずかしい。
小生が若いころといえば、書にばかり浸かっておりまして、色恋沙汰やまぐわいには興味がなく、そのうち好いたお人ができるなぞとは信じられずにおりました。
そういえば、不思議に思うことがありまして。
小生が若者のころですと、スズラン殿はまだ生まれてもいないでしょう。
ですがあの頃、時折屋敷の外から聞こえてきた流行り歌を、口ずさんでおられるのを聞くことがあるのです。
古い歌なぞどこでと首を傾げるのですが、あの方もいつ聞いたのやらと、よくわからない様子だったのです。
ともかく、宿で湯をいただいたあと、部屋にスズラン殿とふたりきりになりました。
常日頃ですと、壬生の屯所では人の目や耳が多いので、まぐわうとなるといささか不都合なのです。
どちらからともなく、布団の上にもつれこむようにして、口を吸ったり、体に触れあったりしはじめました。
そうしているうちに、興奮から呼吸が浅くなり、心拍数と体温が上がっていきます。
マラが兆してきました。
ここしばらくで、小生自身の感じ方が、最初に床のなかで抱きあったときから、いくらか違ってきているように思いました。
スズラン殿が、まぐわいとは慣れだと仰っておりましたが、まさにその通りなのです。
スズラン殿の体のどこに触れれば、どのような反応を返していただけるのか。
ひとつひとつを調べてゆくうちに、あの方の体の形を、もう幾度も診て知ったと思っていましたが、まだ深く知ることができ驚きました。
こちらのマラを口で吸うときの、かすかに顰められた眉。唇が、マラの先にむしゃぶりつくときには、こんなにも大きく開くものかと感心してしまいました。
よく喋る方なので、口まわりの筋肉が鍛えられ、なめらかに動きます。それがこちらのマラを包んでゆくと、あたたかい粘膜が波打つ感触がします。奥に流れている血の音も響いてくるのです。
最初のうちは、気持ちのよさよりも新鮮さと驚きが勝ちますが、二度、三度と経験しますと、徐々にこの身が快楽を拾い始めました。それをスズラン殿に伝えると、嬉しそうに目を細められます。
かわいらしい、と思いました。
あの方、感情表現が豊かなのです。ですので、仕草ひとつで、己が好かれているとわかるのです。
稀有な体験です、このような男を想ってくださる相手になど、ついぞ会ったことはありませんでしたので。
口を吸いあう間にも、好きだとか、触りっこ嬉しいだとか、挿入してほしい、初めてをほしい、あげたいと、うわ言のように零されます。
スズラン殿の浴衣をはだけて、両の脚を抱えあげますと、紫色の瞳が期待と欲情に濡れ光って、いつにもまして美しく見えました。
ぬめり薬でこちらのマラを濡らしながら、あの方のやわくとろけたような尻の穴へ、先を近づけていきます。どちらのものか、喉が鳴りました。
スズラン殿の尻穴は、数日かけてほぐしておりましたので柔らかく、マラの先を押し付けると、蛇が獲物を飲むように、ゆっくりと広がりながら受け入れてくださいます。
「先っちょきた、入っちゃった」と声を震わせられるので、痛みや不快感などがないかをうかがいながら、腰を押しつけ、さらに奥へ進んでゆきます。
マラの先の膨らんだ部分が、尻の奥に埋まってゆきました。
スズラン殿が、こちらの首にギュウと手をまわして抱きついてこられると、より体が密着して交わりが深くなります。
なにぶんはじめてのことですので、時間をかけて根本まで挿し入れ、ようやくおさめてしまうと、スズラン殿が小生の耳元で、「あげちゃったし、もらっちゃったね」と嬉しそうにささやかれました。
かすかに空気を震わす鈴の音のような声でしたので、そのようなかぼそい声がこのお方から出たというのが珍しく、またこちらもスズラン殿と同じ嬉しい気持ちでしたので、思わず身じろぐと……。
繋がり、揺らされたために、スズラン殿がふたたび小さく声をあげられました。
するとこちらのマラが、また余計に熱をもって膨らみます。
「ソウゲンちゃんのちんちん、まだでっかくなっちゃうの。糸瓜が冬瓜になっちゃうよぉ」
そんなことを泣き声まじりにこぼされますので、いやはや己の年を鑑みて、なんとも気恥ずかしい気持ちになりました。
数日前の小生は、マラをいじって快楽を得るということが、正直よくわからなかったのです。
しかしながら、スズラン殿の狭い尻穴をゆるめようと触れているあいだ、口淫ですとか、兜あわせを行い、性器への刺激が続くにつれて、こちらの体にも変化があったようなのです。
スズラン殿が、まぐわいとはひとりで行うものではないと言っておられましたが、その通りなのです。
スズラン殿の狭い穴が緩まってゆくように、小生自身も、肌をあわせた時の快楽なるものをあの方に教えていただき、この身に覚えこんでいったように思います。
動いてもよい、とお許しをいただきまして、腰を引いていくと。
硬くなったこのマラが、おさめている直腸の壁に擦られる感触が、背骨を伝って脳まで響いてきます。
たしかにこれは、性交に夢中になるあまりに、快楽に依存してしまう者も出るはずだと納得しました。この身をもって、知ったのです。
マラへの直接の刺激ばかりではありません。腕の中で、好いたお方が声を殺して唇を噛み、くぐもったうめき声を零される。
こちらが引いた腰をまた押しつけて、スズラン殿の腸へマラをおさめてゆきますと、今度はのけぞって喉をさらし、あられもない声をあげられる。
「まぐわいってすごいぃ」
スズラン殿が、悲鳴のような声で叫ばれました。小生も同意見です。
マラを尻穴から抜いて、また突き入れる。単純な動作ですが、これが驚くほどに奇妙な感覚を生むのです。肉体が快楽を追い、腰が勝手に動く、という。
以前、スズラン殿は五匁の魂の話をされましたが、その五匁の乗り物の操作がきかなくなるような感じなのです。それは挿入する側の小生と、受け入れてくださっているスズラン殿、双方にあてはまるようなのです。
小生は腰を動かしながら、無意識にスズラン殿の口を吸っておりました。スズラン殿もまた意識せずにでしょう、目の端に涙を浮かべながら、舌を出して受け入れてくださいます。
小生は女人とまぐわった経験はありませんが、男と男で体を重ねて、ひとつも滞るところがないのに驚きました。
こちらの名前を呼びながら、腕と脚を巻きつけてしがみついてくるスズラン殿が、裏返ったような声をあげられて、この腕の中で痙攣しながら達します。
スズラン殿はどうやら、小生よりもいくらも感じやすいようでした。日ごろから春本を使った手慰みをして、助平の鍛錬を怠らなかったがゆえかもしれません。
突き入れているマラを搾り取るように、スズラン殿の尻穴が強く締まりました。そのため、小生もまもなく、スズラン殿の直腸の奥で果てました。
間に合わぬものの、すぐに引き抜こうとしたのですが……。
スズラン殿が、そうさせません。
「なかにぜんぶちょうだい。いっしょうのおねがいぃ」
上ずった声で、耳元で囁かれます。
そうなると動くに動けず、結局すべての種を、スズラン殿の中に注いでしまいました。
精を吐いてしまったあと。
床の中でからみあいながら、頭がぼうとして、求められるままにスズラン殿と口を吸いあっていましたが。
やはり外へ出さねば、腹を壊してしまうでしょう。直腸内に注いだものを、掻き出そうと申し出ますと。
「ダメ」と。小生が人の道を外れかけたときに、それを咎めるのと同じ調子で、はねつけられてしまいました。
「この、おなかのなかの子種汁はねぇ。ソウゲンちゃんが、初めて種付けしてくれたやつ。僕のだよ。返してあげない。おなかで大事に育てるの」
そんなことを、ふわふわとした調子で言われるのです。
これには、困ってしまいました。
あとで腹が痛みだし、つらい思いをしてほしくないと思うのですが、言い出せば聞かぬ方です。
けっきょくは、小生が折れるかたちになりましたが……。
あとになっても、腹をくだされる様子はありませんでしたので、そこは安心しました。
このようにして、小生は添い遂げると決めたスズラン殿と、体を繋げるに至りました。
スズラン殿は、念願のまぐわいを果たしたと、毎日上機嫌なのです。
以前よりもふわふわと笑われて幸せそうで、気が落ちついておられるように見えます。
互いの休みが重なりますと、温泉宿に遊郭にと出かけていって致しているのですが、なにか不思議と抱きあう前よりも、あの方の体はまるみを帯びたように見えます。
お顔も、ますますかわいらしく可憐になられたような。
惚れた男の目で見たことなので、欲目というものやもしれませんが、一番星殿に「スズラン、また作画変わった?」と尋ねられておりましたので、実際にそうなのではないでしょうか。
小生自身も、スズラン殿とまぐわううちに、性交の快楽という楽しみに興味を覚えることが増えてまいりました。人の体のやることは、なんであろうと面白いものですね。
性交といえば昨今、京の夜を騒がせていたという、頭が男女の生殖器の形をした化け物なるものも、最近ではパッタリと目撃情報が途切れたとか。
小生は一度も見ておりませんので、すこし残念なのです。
スズラン殿のお父上の墓前で語る話ではないのかもしれませんが、そういう次第なのです。
あなたの息子殿と、こうしてお付き合いをさせていただいている旨、ご報告が遅くなりました。
父の知己の寺の住職殿を、義父上殿とお呼びすることになるとは、小生あのころは夢にも思いませなんだ。
ああ、スズラン殿がお供えの花を抱えてこられました。この愛想のない男が、あのような溌溂としたかわいらしい方を、妻に迎えさせていただくことになるとも夢にも。
「ソウゲンちゃん、先にきてくれてたんだね。お父さんと何の話してたのー?」
はい、息子殿と添い遂げさせていただきたく思っておりますと、墓前に報告をしておりました。
では、義父上殿。また参ります。