──土佐の高知のはりまや橋で、坊さんかんざし買うを見た。
こん、こんっ。くわーい。
こんにちはー。お兄さん、きれいな声で歌うのねぇ。なんだか懐かしい感じのする歌だ。
ひとりでこんなお山の奥までやってきて、なにしてるの。
お薬の草を探してるの? へえー。お医者さんなんだ。
ねぇ、竹ザルのなか、見ていい? わはっ、たくさん集めたねぇ。
こっちの雨傘に使えそうな葉っぱは、細辛っていって、解熱と鎮痛に使うのね。
こっちは鈴蘭でしょ。え、ちがう?
鳴子百合といって、お薬としての名前は黄精っていう。お酒に漬けて薬酒にすると、滋養強壮の効果がある。
釣鐘がいっぱい垂れ下がってるように見えるけど、鈴蘭じゃないんだあ。似てるけどねぇ。
こっちは紫のかわいいお花。えっあっ、触ったらダメなの? ごめーんね。
附子の花は毒が強いから、へたに触ると死んじゃうかもしんないんだ。うひゃ、びっくりした。怖いね。
毒なのにお薬になるの? 少量をほかの薬と組みあわせると、痛みをやわらげる効果がある。
へー。とっても物知りなのねえ、お兄さん。
金剛山に住むお歌が好きな狐の噂を聞いて、お兄さんはぜひ会いたくて、険しい山道をのぼってやってきた。
この辺はけっこうあがりがキツいから、二本足のお人じゃ、ずいぶん難儀したでしょう。そんなに苦労してまで僕に会いたくなっちゃったんだね。
なになに、魅惑の美声に惚れこんじゃったってやつ。
いやー、僕ってば、罪つくりな狐だわ。こんっ。
あっねぇ、今日はもう日が暮れちゃいそうだよ。
人間は夜目がきかないでしょう。足元危ないから泊まっていきなよ。僕のおうち、すぐそこなんだ。
それでよかったら、すこしお話したりしない?
僕ねぇ、人間とお喋りしてみたいの。人間のことが好きなのよ。知りたいことがいっぱいある。
お兄さん、お名前なんてーの?
ソウゲンちゃん! いい名前だねぇ。よろしくね。
僕はスズラン。見てのとおり、お山の狐だよ。こんっ。