「影に飼われる(下)」

(シャドウ
×主えろ、皇子様に敬礼!)




――あっ、あ、あぁあ……」
 まずびっくりしたのは、お尻なんかにそんなモノが入ってしまうってことだった。それも大柄なシャドウが相手で、遠慮なくガクガク揺さ振られている。
 なんで僕は壊れないんだろう。それよりも、身体の中に火が入ったようになっていて、すごく熱い。息も苦しくて、呼吸をする度に変に喘いでしまう。
 後ろから牛みたいな異形に、動物そのままの格好で犯されている。僕はメスの牛じゃないし、女子じゃないし、そもそも人間だし、こんなのは絶対おかしいはずなのに、なんでか変な気分だった。
 尻を抉られるたびに、腹の中でコポコポ音がする。多分、さっき腹の中で欲の蛇が吐き出した体液が泡立っているんだろうと思う。内臓が溶けているんだろうか。すごくじんとして、熱くて、変な感じがする。
「あ、う、……んん、だめ、」
 僕は何故か、腹の中に麻酔を打たれたようになっていて、気持ち良くなってしまっている。性器も硬くなっている。
 何でこんなことになっているのか、全然分からない。何でだ。
「あっ、あ、あ、……っ」
 ひっくり返されて持ち上げられ、向かい合った格好になって、下半身で繋がれた。両太腿を抱えられて上下に揺さ振られる。「ああああ」と恍惚の声が、僕の喉から零れる。
(やばい、きもちい、なにやってんだ、すごい、やばい)
 頭の中でグルグル「まずい」「やばい」って考えていたはずなのに、いつのまにか「気持ちいい」「熱い」に思考が占領されている。もうだめだ。
「んっ、あぁ、あ……」
 腹の中で、勢い良くどろっとしたものが叩き付けられる感触があって、僕はぶるっと震える。中で出された。
 なんだかさっきまではすごく嫌だったはずなのに、いや、何で嫌だったんだろう。良く分からない。思い出せない。
 ずるっと身体が傾いて、床にぶつかるように落っこちた。僕はのろのろと身体を起こす。そして、さっきまで僕をすごく気持ち良くしてくれていた黒くてどろっとした棒に唇を付けた。舌を出して、舐める。咥える。
 そうしていると、黒い手にぐっと引っ張られた。身体を捕らえられて連れて行かれた先には、無数のシャドウがいる。立ちんぼうのもの、寝そべっているもの、いろんなやつらだ。
――ん、」
 黒い手に抱えられて、僕はまた巨躯のシャドウの腹の上に乗せられた。とろとろしていて、僕のものみたいに脈打たない、黒い棒が身体に埋められる。僕はのけぞって喘ぐ。
 でも今度の奴は、さっきのみたいに動いてはくれない。僕はちょっと途方に暮れて、辺りを見回す。そして、じいっと無数の目に見られていることに気付く。
 途端に身体が熱くなってくる。すごい数のシャドウに見られてるとこで、下半身裸にされて、女子みたいに犯されて、僕が喘いだりよがったりしているところを、そいつらは動作ひとつ見逃さず、声ひとつ聞き逃さずにじいっと見守っているのだ。
「……はずか、しいって。見るなって……」
 僕は顔を赤くして、身体を捩った。その拍子に腹の中で擦れる感じがあって、僕はまた喘いで震えた。それで、ああ、と気付いた。
「うごけ……って?」
 どうやらそういうことらしい。
 僕はシャドウの腹に跨った格好で、腰を動かす。腕が使えないから骨が折れたけど、ちょっと動いただけでも大分すごくて、へたり込んでしまいそうになる。でも一生懸命動く。動いたら、気持ち良くなれる。
―― ふ、あ、……はぁっ、あっ、あっ……」
 僕が腰を振って擦るたびに、腹の中に突っ込まれている性器がどんどん膨れて硬くなっていく。そして『良くできました』ってご褒美みたいに、僕の中に射精する。
 なんだか僕は、シャドウたちに飼われているような気分になってくる。こうして気持ち良くしてもらうために、頑張らなきゃならないって言われているような気がする。
 またイって、クラクラしてぽーっとなっている僕を黒い手が抱き上げる。そして――






 そいつは「――え?」とか言いながら、目が丸くなって、ぽかんと口が開いている。
 僕はベッドの上に投げ捨てられるように寝かされて、グルグル回る天井を見つめていた。誰かがそばで喋っている。
「え? えっ? ちょ、あの、ど、ど、どういうことっ? 確かに僕はね、言いましたとも。彼が欲しいって、僕のものになってくれたらなって、でもあのね、これはどういうことなんだい? な、なんでこんな傷だらけなの? なんでこんなドロドロなの? その、まるで集団レイプの被害者みたいじゃないか!……なんで裸にリボンタイと靴下? そりゃ僕の好みですけれども。いやいや、そーじゃなくて、」
 僕はのろのろ起き上がる。目の前には、見慣れた顔がある。今日の昼間も何度か顔を合わせていた。良く笑って、女子にモテてて、手は早過ぎだけど、なんか感じの良い奴だなって思っていた。
「もちづき……」
「は、はいっ!」
 僕が呼ぶと、そいつは緊張しきった顔でびしっと直立した。
 僕は黒い手に背中を叩かれて促されて、手を伸ばして、クラスメイトの望月のズボンに手を伸ばした。ジッパーを下げる。
「え、え、……えええええ?! ちょ、黒田くんっ……」
「きもちよく……なりたい、から」
 僕は取り出した彼の性器を指で摘んで、口に含んだ。舌を動かして舐めると、すぐに反応があった。びっくりするくらい熱い。今までのとは全然違って、僕は驚いてつい口を離してしまった。そこで後ろから黒い手に頭を叩かれた。怒られてしまった。
「ちょ、何やってんの!この子にそんな乱暴……え? 小生意気、だったから、」
 黒い手が、望月の手のひらに何か文字を書いていく。望月は頷き、声に出して読み上げる。
「大チャンスを、逃さず、捕まえて、メス犬に調教しておきました。……ええええええ?!」
 僕はもう一度、今度はちゃんと彼の性器を舐める。
「ちょっ黒田く、」
 硬くて、熱い。人間の皮膚の感触がある。体温を持った生き物に触るのは、すごく気持ちがいい。
「黒田くん! き、君はこんなことしなくていいから! 僕が君を気持ち良く――あ、ああいや、」
 気持ちいいのに、頭を掴まれて引き離された。なにかへまをやらかしたろうか。僕は途方に暮れて、彼を見上げた。
「もち、づき……気持ち良く、なりたいんだ……」
「く、黒田くんー! ちょ、君こ、これ調教っていうか、しょ、正気に戻ってー!!」
「……お願い、だから、もちづき、」
 僕は脚を広げて、彼を見上げて、一生懸命お願いした。
―― きて?」
 望月はひどい衝撃を受けたみたいに固まっていたけど、急に勢い良く僕を押し倒して、すごく真っ赤な顔でぺこっと頭を下げて手を合わせた。



「……いただきます」





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