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アイギスのラボへの移送が終わって、桐条先輩がラウンジに戻ってきた。 「引渡しは済んだ。かなりの損傷だ。大分時間は掛かるだろう」 桐条先輩は僕のほうを見て、「君は大丈夫なのか」と言った。僕の首には綾時に絞められた痕がくっきり浮き出ていた。 僕は傍に座っている綾時がひどく心配そうな顔をしていることに気付いて、ちょっと笑って「大丈夫だよ」と言った。 綾時は俯いて、すごく辛そうな声で言った。 「……ごめんね。すべて、僕のせいなんだ」 この場に集まっている全員が、綾時のほうへぴりぴりしたものを向けている。彼はアイギスを破壊して僕を殺し掛けたのだ。でも今は死に掛けていた僕よりも、綾時本人のほうがひどく憔悴してしまっている。 僕は席を立って、上座の綾時の隣に座り込み、彼の手を取って顔を覗き込んだ。 「……大丈夫か? ひどい顔してる。無理に喋らなくていいから」 「ちょっと、さっき殺され掛けたんでしょ?! なんでそんな何でもない顔して心配してんの? 危機感ってもんがないの?」 岳羽に怒られた。僕はちょっとむっとして、「綾時にひどいこと言うなよ」と言ってやった。 「綾時は危なくなんかない」 彼らは何にも知らないのだ。綾時がどれだけ人畜無害で優しいのかってことを。確かにちょっと女癖は最悪だけど(僕の母さんに愛想を尽かされるくらい)、だからって綾時が危ない奴だってことにはならない。女の子には危ない奴かもしれないけど。 みんなは僕を見て変な顔をしている。何か変なものでも食ったんじゃないかと心配しているみたいな顔だ。なんか失礼だ。何だって言うんだ。 「――ちびくん、大丈夫だよ。僕は大丈夫だから、少し話をさせてくれるかな」 「……うん」 僕は渋々頷いて、ソファに戻った。綾時がそう言うんじゃしょうがない。 「おまっ……どうしちゃったの……頭でも打った?」 「リーダーが変です……」 順平と天田がひどく困惑したように僕を見ている。僕は正常だ。 綾時が僕と彼らを見て、やっとちょっと微笑んで、「混乱させちゃってるみたいでごめんね」と言った。 「僕らは家族なんだよ。七歳になるまで彼も『望月』だったんだ。両親が離婚して、母親方の姓に変わるまではね」 「あっ……だから、この間の手紙……」 山岸がぽんと手を打って、納得したように頷いている。綾時は「手紙?」とちょっと不思議そうな顔をしたが、ともかく話を進めるべきだと判断したらしい。「ちょっと長くなるけど聞いて欲しいんだ」と言った。 「十年前、あるシャドウの暴走事故が起こったんだ。実験が成功していれば生み出されるはずだった、十三番目のアルカナを持つシャドウの上位存在のね。 そいつは鎮圧に現れた対シャドウ兵器を次々に破壊して、とうとうあのムーンライトブリッジの上まで逃げ込み、戦車の最後の一体と戦闘を始めた。 そのシャドウは与えられた十三番目のアルカナである『死神』そのもので、触ったものには区別なく死を与えることができた。生物には。残念ながら、兵器は生き物じゃなかったから、そう簡単に決着はつかなかったんだ。 シャドウと戦車が戦い続けるその場所には、ちょうど、『偶然』ある親子が居合せた。彼らは逃げようとしたけど、子供を守って父親は既に『死神』に掴まれていた。じきに、子供を背負って歩いていた父親が倒れる。でもまだ生きている子供は、父親を見捨てて逃げることができなかったんだ。その場に留まってしまった。 『死神』は、食べかけていた父親に目を付けた。 戦車は生きている子供に目を付けた。 彼女は仕留め損なった『死神』を子供の中に閉じ込めたんだ。どちらにしても、子供にとってはひどい話だよね」 「綾時」 僕は硬い声を出して、綾時を窘めた。 「そんな言い方をするな」 「……うん」 綾時は困った顔でちょっと微笑んで、「ごめんね」と言った。 「子供に封じられた『死神』は、――まあ仮に『デス』という名前だとするけど、それから十年の間子供の中で育まれた。そいつには心なんかなかった。心を食うシャドウと同じようなものだからね。だけど、長い間子供の胎内で慈しまれているうちに、不完全な『心』みたいなものを得たんだ。はじめはすごく原始的なものだった。「さみしい」、「一人はいやだ」、そんなふうな衝動だね。でもある時、そいつはまた『偶然』友人を得ることになる。彼の母体になっている子供の、深いところへ沈んだ心の欠片だった。感情の雪が降積るとても心地良い場所だったよ。子供はなけなしの、すりきれた自分の心を削って『デス』に与えてくれたんだ。そこで『デス』は人の心を得た。 ――ある時スイッチが入れられた。デスを宿した子供が、再び『偶然』この場所へ戻ってきたんだ。それが合図だった。各地から、十年間飛び散っていた十二のアルカナが、ひとつになるべく集まってくる。飛散した記憶を取り戻し、『デス』は完全なものになる。その役割を果たす為に、もう一度世界に生まれ落ちた。滅びを知らせる宣告者として」 綾時は静かに、「僕は人間じゃない」と言った。 「僕はシャドウだ。彼の父親を殺し、彼の胎内で育まれ、人類の滅びを決定付けるために産まれた宣告者だ。最悪の、――君らの敵だ」 僕はなんだか壮大な夢物語を聞いているような気分だった。みんなもそうだと思う。でも多分これは現実で、僕の中から引っ張り起こされてきた、擦り切れた記憶にも、いくつか引っ掛かるところがあった。 「……僕の記憶が復元されるたびに、君にも少しずつ心が戻ってきたろう? それを感じたはずだ」 綾時が僕を見て言った。僕は緩く首を振った。僕にはわからない。でも思うところはあった。満月が終わるたび、みんなはいつも僕に聞くのだ。「昨日何かあったのか」と。「いつもと大分感じが違う」と。 「……『偶然』、『偶然』って、なんだよそれ。そんな上手い話が、」 「『偶然』なんだ。……そうなんだ、全部」 「綾時、いい」 僕は頭を振って、綾時を見た。彼の気遣いはすごく嬉しかった。でも僕ばっかり楽な選択をするわけにはいかない。 「自分のことはちゃんと自分で責任を持つよ。気を遣わなくていい。あとで、ちゃんと話せるから」 「……うん」 綾時が言うには、じきに空から滅びが降ってくるのだそうだ。そいつの名は『ニュクス』と言う。それを避ける手段はない。「春まで持たない」と彼は言う。それはあんまり唐突過ぎて、僕らの言葉を奪う。 「そ、そんなもん、いつもみたいにパパッと倒しちまえば」 「滅びは死と同じものなんだ。生物はすべて死を避けることができない。永遠の生命なんて存在しないのと同じように、まず戦うという概念すら存在しないんだ」 絶望的だと綾時は言う。 「ただひとつだけ方法があるよ」 「ど、どうしたら?」 「僕を殺せばいい。他の誰にも僕を殺すことはできないけど、他ならない僕を育んだ子供、僕の『母』なら、それができる。――彼だけだ」 みんなが一斉に僕を見た。僕は、静かな心地だった。僕はいつでも静かな心地だった。感情の波なんてものは、僕には存在しないのだ。あの日全ては失われてしまった。感情が還ってきたって、僕の心はきっともう枯れ果てて風化してしまっているのだ。 僕は「そう」と頷いた。 「うん。君が僕を殺せば、影時間もシャドウも消滅する。滅びの記憶もなくなり、安らかな最期を迎えられる。もしかしたら少しだけ滅びを遅らせることができるかもしれない」 綾時は静かに、「だからゆっくり考えて決めるんだ」と言った。 「年末にまた来るよ。十二月三十一日だね。その時までに、決めて欲しい。僕は君たちに恐ろしい思いなんてさせたくないんだ。――君には、特にね」 綾時は立ち上がって、僕の傍へ来て、悲しげに微笑み、僕を抱き締めた。 「……大きくなったんだね。きっともう、肩車とかできないね。今まで、いっぱい怖い思いをさせてごめんね。僕があの時守ってあげられなかったせいで。だからもういいんだ。全部忘れて、ほんの少しの間だけでも、君には普通の子供として生きてもらいたいんだ」 「りょうじ、」 「勝手なことばっかり言ってごめん。僕、ほんとにダメな父さんだよね。楽しいことがいっぱいある未来がきっとあるなんて言っておきながら、僕は君から奪うことしかできない」 「……僕は大丈夫だよ。泣かないでよ。もう一度あなたに会うことができただけで、僕はすごく嬉しいんだから」 僕は微笑んで、「本当だよ」と言った。 話が済むと、綾時は出て行ってしまった。彼がいなくなると、全員が廃人みたいになっているラウンジのなかで、まずはじめに再起動したのは順平だった。彼はいつかみたいに八つ当たりでもするみたいに僕を殴り付け、胸倉を掴んだ。 「……なんで、あんなモン育てちまったんだよ」 彼は随分怒っているみたいだった。きっと怖いのだ。無理もない。僕がいつもみたいに静かに見返すと、彼は余計に怒りを募らせたみたいだった。 「お前のせいだろうが?! あんなモン抱えてなんでのこのことここに戻ってきたんだよ! お前の、お前のせいなんだぞ!! なんでこんな時までそんな冷静な顔してられんだよ!!」 「順平、やめなさいよ! 彼が十年抱えてくれてたおかげで、私達今ちゃんとここにいられるんでしょう?!」 「わかってんだよ! でも、怖ぇもんは怖えんだよ! お前さえ……」 順平は多分、「お前さえいなきゃよかった」と言おうとしたんだと思う。でも途中で言葉を飲み込んだ。それを言ってしまうには、彼はいい奴すぎたのだ。 「……俺さえいなきゃ良かったって、言えば良かったんだ。ほんとのことなんだから」 「てめ……ああ、そうだろうよ! リョージの奴を殺してやろうって、平気で頷ける奴なんだもんな、冷酷なリーダーさんよ!」 順平は僕を突き放した。バランスを崩して床に崩れる僕に、唾でも吐き掛けそうな勢いで、彼は言った。 「良くわかんねーけどよ、あいつお前の家族みたいなもんなんだろ? それすらどーでもいいってのかよ。だったら滅びなんか、怖くねーんだろうが? お前みたいな何にも大事なモンがねー奴にはよ」 「……うん」 僕は蹲って口を押さえた。咽にどろっとした液体が逆流してくる感触がある。咳込むと、生温かい液体が手のひらを汚し、それでも抑えきれなくて、制服と床を汚した。 「――お、お前」 順平が驚いた顔をしている。さすがに真田先輩が立ち上がって、順平を殴り付けた。 「順平! この馬鹿、やり過ぎだ! 殺す気か?!」 「ちっ、違うっスよ! そんな、ここまでは」 「ちょっともう止めてよ! なんなのよ、もう嫌だよ!」 ラウンジはかなり混乱している。僕は頭を振って立ち上がった。きっと綾時が彼の役割を思い出したせいだ。そして、それは僕の役目が完全に終わってしまったことを意味する。もう庇護の必要はない。血が咽に詰まって苦しいが、こんなことはなんてことないのだ。 「……先輩、順平の言うとおりです。俺には、滅びなんかどうでもいい。スイッチはもう入ってしまってるんです」 僕はちょっと微笑んでいた。頭の中に掛かっていた霧が晴れると、このままひとりで死んでいくんだというひどい孤独感が僕を襲ってきた。でもどうやら、僕はひとりでは無いらしいのだ。綾時が一緒にいてくれる。 「どのみちもう長くは持ちません。選択だって、どうでもいい。滅びと向かい合うのも、その前に用済みの俺が壊れるのも、……綾時を殺して、俺も死ぬのも。どれも同じです」 僕は口元を袖で拭って、歩き出した。 「綾時が俺に普通を求めるなら、俺はできるだけそうしようと思います。俺には心なんか無いから、恐怖も苦痛もありません」 山岸が慌てて、僕を引き止めた。彼女はこんな時でも心配性だ。 「リーダー! こんな時間にどこへ?!」 「綾時んち。鞄置いたままだった」 扉を開けると、冬の凍て付いた大気が僕に纏わり付いてきた。去った綾時の姿はどこにもなかった。 再び訪れたムーンライトブリッジは、先ほどとは様相が変わっていた。緑色の空も、大き過ぎる満月も消えてしまうと、そこはまったく僕の知らない景色に変わってしまっていた。 僕はさっきまでと同じように、ふらふら歩きながら、泣いていた。涙がとめどなく、あとからあとから零れてきた。何かが悲しいってわけじゃない。何もかもだ。僕は、僕の身の周りの全てが悲しくて、苦しくてしょうがなかった。 それが、僕には不思議だった。心が還るってのはこういうことなんだろうか。確かに前の春よりは、僕は大分世界の中にある僕というものに上手く馴染むことができていた。たとえば友達といて楽しいとか、順平に罵られて悲しくて悔しいとか、綾時と一緒にいられて嬉しいとか、好きだとか、そういうふうな感じだ。 僕は手摺りの向こうにある遠い海を眺めながらゆっくり歩いていく。凍った潮風が僕の身体を切り裂くように吹き抜けていく。 僕は綾時のことを考えていた。彼はどこに行ってしまったんだろう。なんで今更、どこかへ行ってしまうんだろう。なんで僕を一緒に連れて行ってはくれなかったんだろう。 僕は、綾時と一緒に行きたかった。また二人でいられるならどこだって良かった。滅びなんて、本当に今更のことだ。綾時が僕の前からいなくなってしまったあの日に、もう僕はきっと死んでしまっていたのだ。 あのあとの思い出は本当に漠然としている。僕に思い出せるのは、白いベッドだけだ。自傷を防ぐための拘束具が取り付けられたベッドと窓のない白い病室。それは僕の心の中の温かい闇のなかとリンクしている。 僕のなかにいる、僕だけにしか見えない友人と語り合っていると、誰もが僕を異常者扱いする。「そんな子はどこにもいないよ」と言う。あの子は確かに僕の隣にいるのに、誰にも見えないのだ。僕以外には。 僕を誉めてくれるのはドクターたちだけだ。彼らは嬉しそうに僕の話を注意深く聞いて、「素晴らしい」と誉め称える。いつしか僕のあだ名だった「カオナシ」とも呼ばれなくなり、僕は「母胎」と呼ばれるようになる。 僕は一日のほとんどを眠り続けて過ごす。どれだけ食事を採らなくても、ある一定のラインの上で、僕は生きていけた。背も伸びる。僕は眠りの中では子供の姿のままなのに、現実の僕の身体は知らないうちに大人に近付いていく。自分の本当の姿への認識が薄くなる。僕の精神世界は幼い子供の描くままで止まっている。 今年の春にスイッチが入れられた。 『これから一年間、君は月光館学園の二年生として、学生生活を送るようになる』 ベッドに寝ている僕の拘束具を外しながら、ドクターが言う。 『私の管轄下で、『特別課外活動』を行ってもらう。詳細は追ってってことで、まずは君のごく普通の一般生徒としての知識と常識の問題だね。割と強い催眠が必要かもしれない。君はこれまでに、各地を点々としてきた。親の都合でね。どこへ行っても目立たない生徒で、友達もいなかった。だから学生生活は漠然としていて、ろくに思い出もない。それこそどうでもいいくらい。十年前に親を無くしているが、その時のショックで七歳以前のことはほとんど覚えていない。家族の顔とかいろいろね。君は影時間もシャドウもペルソナも知らない。普通の人間だからね。いいかい? あとは私の言うことに従えばいい』 僕は頷く。ドクターは『良い子だ』と僕の頭を撫でる。 『もう一度言うが、これから一年間だ。それが君の身体の限界だよ。スイッチを入れてから、君が『生きる』寿命ってやつだね。それまでに、君はなんとしても君の役割を果たさなきゃならない。いいね? とりあえず本物のペルソナ使いを四人確保している。一人は少々問題があって、今は離れているが……まあじきに使えるようになるさ。君は難しいことを考えず、君が学んだ統率技能を最大限に生かしてくれればそれでいい』 僕は頷く。僕は望まれるままを行う。何も疑問はない。 『何か持っていきたいものはあるかい?』 僕は頷く。『ミュージック・プレイヤーを』と答える。僕がいつも肌身離さず身につけているお守りのようなものだ。確か子供の頃に、誕生日に誰かにもらったものだ。旧式で、長い年月を経た今は手垢に塗れてところどころ錆びている。もうきっと誰も使っていないくらい冴えない代物だったが、僕はそれに触っているとひどく安心することができた。 『分かった。最新のものを用意するよ。とびきり恰好良い奴をね』 ドクターはそう言って、僕から古びたプレイヤーを取り上げる。僕はその時の、まるで魂を鷲掴みにされ、抜き取られたような感覚を忘れない。 ――さっきから嫌なことばかり思い出される。漠然としていたはずの記憶が、意識するだけで溢れるように沸き出てくる。ドクターは、幾月さんは死んだのだ。そして僕も役割を終えた。僕は木々に残された蝉の抜け殻のようなものだった。きっと生きているとは言えない。 僕は暗い海を覗き込む。僕の子供はもう産まれ落ちていた。知らずに僕を守ってくれていた、死を押し止める存在はもう何もない。僕は、 (……りょうじ、) 「――おい!!」 後ろから声が掛かって、僕はゆっくり振り向いた。 順平だ。どうやら僕を追い掛けてきたみたいだ。ひどいことを言ったって気にしているのか(でもそれも今更だ)、真田先輩あたりに怒られて僕に謝りに来たかってとこだろう。彼は夢遊病患者みたいに橋の上をふらつきながら歩いている僕を見て、ひどく焦った顔で言った。 「あのぉ……と、飛び込もうとか、考えてないよな?」 「……なんで」 僕はなんでもないふうに言って、ちょっと笑った。順平は僕の顔を見て驚いたようだった。 「おまっ、泣いてんのか?」 「……悪いかよ」 「いや、あぁ、その、な。……オレ、お前に無茶苦茶言ってばっかで、こんな時までアタっちまって、マジでいつも――」 順平の口が「ごめんな」というかたちに動いたのを、僕は見た。でも、声は届かなかった。まるで耳元で打ち上げ花火が炸裂したような音が鳴り響いて、次の瞬間には、僕は顔面から地面のコンクリートの上に激突していた。痛みは感じなかった。ただ全身が泥のように重くなって、まるで動かなくなる。この橋は前にも僕に顔で殴り付けられたことがあったなと、変なことを思い出していた。 「――心配はいりません。ただの麻酔弾ですよ。少し眠っていて下さい」 背後から聞き覚えのある声が聞こえた。順平が顔を強張らせているのが、ちょっとだけ僕の視界にぶれて映った。 「お前ら……!」 「動かんほうがええでえ。チドリからもろた命や。大事にしたほうがええんちゃうか?」 「そう、用があるのは彼だけです。彼は元々は、我々を統率する為に作られたもの。いまだに惰性で活動を行うあなた方には勿体無い人です」 身体がふわっと持ち上げられる感覚があって、そこで僕の感覚は全て閉ざされた。 |