リュウは本当のところ少し気後れしていた。
だがめいっぱいの笑顔でもって、ボッシュに笑い掛けた。
「風邪ね、もう治ったよー。迷惑掛けてごめんね、あはは」
ものすごく緊張してしまう。執務室でボッシュと二人っきりなんて状況だ。
他のメンバーが間の悪いことに退室してしまっているので、必然的にそうなったのだ。
「お、おれ、なんか寝たまま窒息しちゃってたって……ボッシュが助けてくれたんだって聞いたよ、あの、ありがとう」
「……べつに」
「なんでかなあ……呼吸困難だって。ただの風邪なのに変なの。まあいいや」
リュウにはやることがたくさんあった。
死んでいる間(これも妙な言い方だと思う)にボッシュがオリジンの仕事を代行していた分、きちんと引継ぎを済ませなければならないらしい。
もうこのままボッシュがオリジンでいいんじゃ、とリュウは本当のところ思っていたが、口には出さなかった。
リュウにも責任感というものはあった。
例えリュウがオリジン・メンバーとしてここにいられるのはあと少しの間だとしても――――それも言わなかった。
ただそうしている間はリュウはボッシュとふたりきりでいられた。
これが職権乱用というものなのだろうか。
リュウは苦笑してしまいそうになったが、なんとかそれを引っ込めて、ボッシュに言った。
「じゃあ、よろしくね」
ボッシュはなんだかリュウが気恥ずかしくなってしまうくらいにじっとリュウの顔を見ていたが、やがて何冊かファイルを取り出して、デスクに適当に並べた。
リュウはボッシュの椅子の横で立ちんぼうをしたまま、屈んで覗き込んだ。
「……大したことはしてない。これがラボの実験……日光が人体に与える影響についての途中経過報告。プラント経費に関して。街の北の開拓計画。地下からの移民に関して。ジオフロントの周囲の整備。あそこ、イロイロ作るらしいよ、あの道具屋の奴らが。あとそれから今期に入っての――――」
「ま、待って待って待って、ボッシュ。おれ、まだ……」
「……このくらい、どってことないだろ? オマエ、前もやってたんだろ」
「う……いっぺんに言われても、おれはボッシュみたいに頭が良くないんだよ。ゆ、ゆっくり教えてよ……」
「俺も忙しいんだけど。残ってる仕事、今月中に片付けなきゃならない」
「……? なんで? 期日が迫ってる仕事なんて、あった?」
「べつにどうでもいいが、続けるぞ、おら。ああ、こっちはオマエが死んでた時の奴だ。目を通せ」
言われた先には、棚にいっぱいに詰ったファイルの束があった。
「……こ、これ? おれ、そんなに長い間寝てたっけ??」
「ハア?」
「だ、だってこんなの、おれがやってたら何年掛かるか……」
「オマエがとろくさいんだよ。無駄口を叩くな、次だ」
「うー……」
リュウは困ったように唸って、頭を抱えた。
知恵熱でも出たのか、頭が痛くなってきた。
だから、やっぱりつい言ってしまった。
「……もう、ボッシュがオリジンやった方が絶対みんなのためだよ……。おれ、向いてないよ。もうずーっと長い間、辞めて釣り師になりたかったのに」
「次。メンバーの給与に関して。ジェズイット、80%カット。リュウ、50%カット。リン、20%カット。……何やったの、オマエら」
「あ、それは……ジェズイットは痴漢罪で、リンはセントラル破壊、おれは、えっと……こないだプラント破壊……したらしくて……覚えてないけど……お酒呑んじゃうと、駄目なんだ。なんにも覚えてなくて」
「……ふーん。て、なんで俺も給料減らされてるんだよ。何もやってねえだろ。クピトめ」
「あ、ほんとだ……ボッシュ、10%カット。わあ、ニーナは偉いね。なんにもついてない」
「親馬鹿も大概にしろよ。続きだ、とりあえず御印が入ってるやつは全部だ」
「うー……む、むずかしいなあ……」
捲っても捲っても減らないページに目を眇めながら、リュウはファイルに顔を近付けて、はあっと溜息を吐いた。
眩暈がしそうだ。
「おい、ちゃんとわかってるのかよ」
「あ、う、うん、ええと……」
「……わかってねえだろ。リュウ、もっと近寄れよ」
「え?」
「こっちだ」
ボッシュに何を言われているのかわからなくて、リュウは目をぱちぱちとさせた。
ボッシュは舌打ちをして、リュウの腕を掴んで引き寄せた。
「……わ!」
「そんなとこでへらへら笑ってたって、全然頭で理解なんかしてないだろ、リュウ」
「う、うん。実は……」
「しょうがないね、ローディ」
「う、うー……ごめんね、ボッシュ……せっかく、教えてくれてるのに……」
おれって駄目だなあ、なんてリュウは俯いて、はあ、と溜息を吐いた。
「D値誤診じゃないのか? オマエが1/4なんて」
「そ、そうだと思う……」
「ま、なんでもいいんだけど」
ボッシュはそうして、少しにやっとたちの悪いふうに口の端だけで笑った。
リュウは、その笑い方に見覚えがあった――――確かサードレンジャーで彼の相棒であった頃に、ろくでもない嫌がらせを思い付いた時などに良く見せたものだ。
「リュウ、ほら」
「な、なに? ボッシュ」
なんだか背中がぞわぞわした。リュウは困って、なに、と訊いた。
「……座りなよ」
「え、いいよ、このままで」
「俺が座れって言ってるんだ。ほら」
そう言って、ボッシュは自分の膝を、ぽん、と叩いた。
「ここ」
「え、えええっ??」
リュウはびっくりして、あたふたした。
今度は何の冗談なのだろう。
ボッシュは人が悪いところがある。昔からだ。
「へ、へんなこと言わないでよ。びっくりしちゃったじゃないか」
「冗談? ハア? 何言ってんの、オマエ。マジだよ、あんまり物覚え悪いからさあ」
ボッシュが、やれやれと肩を竦めた。
「ちゃんとイチから教えてやるよ。そんなとこに突っ立って、オマエ全然わかってないし」
「あ、あの、ボッシュ……」
リュウは真っ赤になって、俯いた。
「は、恥ずかしいよ」
「今更だろ」
ボッシュはそっけなく言って、リュウの腰を掴んで引き寄せた。
「わ……」
彼に座り抱きされるようなかたちになって、リュウは顔を赤らめた。
だが、ボッシュには気にしたふうもない。
意識するだけおかしいのかな、なんて思い直して、リュウはどぎまぎとしながら、デスクの書類に目を向けた。
身体の横からボッシュの腕が伸びて、指先でとんとタイトルを突付いた。
「はい、読んでみろ」
「う、ええと、ジオターミナル建設計画……ステーションに隣接して、あの、ボッシュ?」
「なに」
「この字、何て読むの?」
「……りんせつ」
「う、うん。隣接して大型商業区を建造、これにつきまして我々は、一の時期に以下の費用を中央区に申請……」
「しんせい、だ」
「し、申請します……ええと、いち、じゅう、ひゃく……うー」
「……五千万ゼニー」
「ひゃー、すごい……一生働かなくても暮らせちゃうね」
「……オマエ、給料いくら?」
「うん、ボッシュといっしょだと思うよ。オリジンだから。今は貯金してるんだ。ほら、二ーナの将来とかいろいろ考えて、うーん、多分もう百万ゼニーくらいあると思うよ!」
「……百万?」
「うん、でも半分引かれてるのにレンジャーの時と月給がおんなじって、すごいよね、オリジンって……」
「……オマエ、絶対騙されてるよクピトに」
「……? え、なんで?」
「別に……続けろ」
「あ、うん。ごめんね、ええと。ジオフロント・実験都市間の道路建設凍結について。出没ディクの掃討が完了しましたので、再開したことを、ご報告します……地下からディクもいっしょに上がってきちゃったもんね……」
「へえ、難しい言葉、読めたじゃん」
「……へへ。サードレンジャーの時に教えてもらったよ。掃討とか、凍結とか……」
「はい、次」
「あ、うん。こっちは……ええと、プラント増設に関して。バイオプラントの建造については……あの、ボッシュ?」
「ん? なに。またわかんないとこでもあった?」
「い、いやあの、ねえ……」
リュウは居心地悪く身じろぎしながら、真面目な疑問を感じ、ボッシュに訊いた。
「……なんでおれの胸、触るの?」
「どうでもいいだろ。次の、読め。無駄口を叩くなって言ったはずだ」
「あ、あの……えと、ごめん。新型改良種の……作物について、う、食用については……まだ、あっ」
手持ち無沙汰そうなボッシュの手が、リュウの胸を揉みしだいて、書類どころではない。
だけどボッシュは冷静そのままの声で、咎めるように言うのだった。
「止まるな」
「うう……うん、しょ、食用についてはまだ検討中……っ、あ、もう、ダメだったら、ボッシュ……」
「次」
「さ、さわっちゃ……へ、へんに、なっちゃ……」
「次は?」
「うう……ち、地下からの、移民にともない……都市の拡大、について、あ、っ」
ボッシュの手は、次第に大胆な動作を見せるようになってきた。
リュウの胸を揉み、きゅ、と乳首を摘んで、爪を立てた。
「……ひ、っ、……やぁあ……ん、っ」
リュウはゆるゆる首を振った。
俯いて、駄目だよ、と懇願した。
「や、やだ……し、仕事中だよ、あの」
「じゃあ仕事をしろよ。止まるな。次、読めよ」
「う、うー……か、開拓に、ついて、……ふっ、あう……れ、レンジャー隊の投入……ディク掃討後、レンジャー監視下での作業を……あぁっ!」
コートの厚い布越しに触られているだけでどうにかなってしまいそうだったというのに、ボッシュの手がごそごそとリュウのコートの中に潜り込んできて、ぎゅっと両の乳房を掴んだ。
リュウは震えた。
呼吸が自然早くなって、顔に血が上る。
そんなところ、ほら次、なんて急かされて、リュウはじわっと目に涙を浮かべながら、書類に目を戻した。
「ひ、ひどいよ、ボッシュ……」
「オマエ、やる気あんのか? ちゃんとしろよ」
「うう……ト、トリニティの地下復旧作業について……最下層区民の、救済……再登録。通行規制の緩和と……っ、は、あっ、ダメ……ダメだよ、ボッシュ……!」
ボッシュがリュウのコートの裾から手を突っ込んで、太腿を緩く撫でた。
そのまま脚の付け根をきゅっと引っ掛かれて、リュウはびくっと震えて背中を逸らせた。
「あ……や、やっ、あ、ダメ……!」
「真面目に仕事しなよ、オリジン様。オマエがサボリなんていい度胸だな。せっかく俺が掛かりっきりで教えてやってんのに」
「あ、うぁ、そこ、ダメ、ボッシュ……」
ふるふる首を振って、リュウはやめてえ、と懇願した。
ボッシュはいつものように言うことを聞いてくれるはずもなく、リュウの股をつっとなぞった。
「や、やだあ……ダメ、そこ、触られたら、あっ」
「ん? どうしたよ、リュウ」
「お、おかしくなっちゃ……んっ、ボッシュう、い、意地悪、だよ……!」
「仕事は?」
少し笑いを含みながら訊かれて、リュウは頭を振った。
しなきゃならない。こんなことをしてる場合じゃない。
「ちゃんと……する、か、ら……」
「じゃあ続きだ。まったく、しょうがない。ほら、読めるだろ? 見ろよ、都市の実験期間三年が終了間近で、近々下のやつらが上がってくるんだと。太陽光に拒絶反応を示す奴らの為に、地下に新層建設……聞いてるのかよ」
「ん……きい、て……」
リュウは震えながらこっくりと頷いて、またびくっとした。
コート越しに、尻の辺りに、硬い感触がある。
(も、もしかして……)
こんなところでまさか――――リュウは真っ青になった。
ボッシュはもしかして、悪ふざけをこのまま最後まで止めるつもりないんじゃないか、なんて恐ろしい考えが思い浮かんだ。
「……嘘吐けよ、ぜんっぜん人の話、訊いてないだろ」
「え……っわ!」
「サボリオリジン」
くすくす笑いながら、ボッシュはリュウの太腿を掴んで足を開かせた。
コートを捲って、アンダーを破かれて――――なんだか嫌な既視感を感じる――――そして下腹部が露出させられて、リュウの耳にはボッシュのベルトの金具が擦れる音が響いた。
つっと股に押し付けられた硬い感触は、熱くて、少し湿っていて、もう何度か経験したものだった。
リュウは慌てた。
「あ……あのっ、ボッシュ!? ちょ、ほんとにまずいよ、し、仕事中に……!」
リュウが暴れてもボッシュは平然としていて、入れるぞともなんにも言わないまま、そうしてリュウの中にそれを潜り込ませてきた。
「ひゃ……あぁっ!」
背中越しに縋るわけにもいかず、リュウは悲鳴を上げた。
「あ、あ……!」
いつものように組み敷かれる訳でもなく、自重がそのままに掛かるせいで、すぐにリュウの身体はボッシュのものを呑み込んでしまった。
恐る恐る目を落とすと、もう接合している部分はしっかりとボッシュを咥え込んでいて、リュウは真っ赤になってしまった。
「淫乱オリジン。オマエ、もうすげー濡れてたね。なんで?」
ボッシュが触るからだ、とリュウは言おうとした。
でも喉が詰まって、唇が震えて、上手く言葉にならない。
リュウは震えながら、頭を振った。
そのくらいしか、できそうになかった。
「ほら、もういい音してるし」
「あっ、あ、あん!」
開脚した腿を抱えられたまま揺らされると、ぐちゅぐちゅと濡れた音が大きく響いて、リュウは目を閉じてきゅっと俯いた。
「あ……はぁっ、あ、ボッシュ……」
「まだ仕事、する?」
ボッシュはそうして、リュウをからかうように意地悪く訊いてきた。
わかりきったことだ、リュウは首を振った。無理。できない、もう。
繋がった場所を指で弄くられて、リュウは小さく喘いだ。
「こっちに集中する?」
リュウはこくこくと頷いた。
リュウの背後でボッシュがどんな顔をしているのかは見えないが、わかる。
きっとすごく意地悪な顔をしているんだろう。
いつも、リュウを苛める時に見せるもの。
「淫乱オリジン。えっちだね、オマエ」
リュウは少しだけ考えて、戸惑いながら、こくっと頷いた。
確かにそうだろう。
リュウはボッシュの言うとおり、ちょっと、その……えっちとか、淫乱とか、そうなのかもしれない。
困るけど、嫌じゃないのは確かなのだから。
「気持ち良くなりたい?」
「ふ……あっ、ボッシュう……」
リュウは、自分の甘えたみたいな声がとても恥ずかしかったが、こくっと頷いた。
「あっそ」
そんなになってもボッシュはそっけなかった。
リュウの背中をどんと乱暴に押して、デスクにうつ伏せに上半身を押し付けた。
震えながら顔を上げると、ボッシュは面倒臭そうに椅子を蹴り倒したところだった。
彼は後ろからリュウを抉って、リュウが悲鳴混じりの嬌声を上げると、からかうように髪を引っ張った。
「あ……っあっ、ボッシュっ、やぁ……っ!」
背後から責め立てられるのは、あまり覚えがなかった。
ひどく乱暴に中を擦り上げて突かれても、ボッシュに縋り付くこともできないし、ボッシュの顔も見えない。
それが少しの不安をリュウにもたらしたが、それもすぐに薄れていった。
ボッシュはリュウの気持ち良くなるところを探し出して、突いてきた。
乱暴にそこばかり責め立てられて、リュウはすぐに溺れてしまった。
「はぁっ、あぁあんっ、いや、ボッシュ、ボッシュうぅ……!」
「少し声が大きい。外に聞こえるぞ」
「――――っ!! んんー……ッ!」
慌てて口元を押さえて、声を殺す。
こんなの、誰かに聞かれたら恥ずかしくて死んでしまう。
もしニーナに見られたりしたら教育上最悪だし、他の誰に見られたって考えるだけで泣けてくる。
「そんなにきもちい?」
ボッシュにそんなふうにあからさまに訊かれて、リュウは更に真っ赤になりながら、おずおずと頷いた。
「ん……ボッシュ……と」
「ん?」
リュウは恥ずかしくて泣き出しそうになりながら、少し顔を向けて、切れ切れに言った。
「……も……もっと、して?」
すごく、気持ちいい――――小さくぼそぼそと言って、リュウはぎゅっと目を瞑った。
ボッシュはきっと変な顔をしているだろう。
呆れているかもしれない。
また淫乱とかえっちだとか言われるかもしれない。
リュウは後悔していたが、確かにほんとに気持ちが良くて、ボッシュにこうされることは
――――その、すごく、好きなのだった。
「――――あぁっ!」
じゅぷっとまたひどく濡れた音が響いて、リュウは背中を反らせた。
ボッシュはリュウが懇願した通りにもっと激しく、リュウの中を奥まで掻き混ぜてくれた。
気持ち良くて、どうにかなってしまいそうだった。
「……可愛いねオマエ」
どちらかというと呆れたふうにそんなことを言われて、リュウはかっと頬を染めた。
ボッシュはからかっているのかもしれないし、馬鹿にしているのかもしれない。
皮肉だろう。
でもそんなふうに言われると、変なふうに反応してしまうのだ。
「あっ、はぁあっ、ボッシュっ、ん、す――――」
すき、と言い掛けて、リュウは慌てて手で口を覆った。
もう言わないと決めたのだ――――ボッシュはどうやら単にリュウが声を抑えているせいだと思ったようで、なんにも言ってこなかった。
怒らなかったし、不機嫌にもならなかった。
リュウはほっとして、おずおずと自分から脚を開いて、ボッシュをもっと深く呑み込もうとした。
「あ……」
だがボッシュはすっと身体を引いて、リュウから離れてしまった。
中から抜かれて、リュウは震えながら顔を上げた。
きっとすごく物欲しそうな顔をしているに違いない。
「ボッシュ……やだ……」
じわじわと涙が溢れてきて、零れた。
リュウはボッシュを見上げて、懇願した。
「やだぁ……もっと、ちょうだい……?」
繋がっていたところが、中も入口もとろとろに蕩けて、物欲しげに痙攣を繰り返していた。
ボッシュは彼にしては珍しく呼吸を乱していて、そんなリュウをじっと観察していた。
見ないで、そう言おうとしたが、ふいにボッシュの腕が腰に触れて、リュウは安堵したようにふと艶めいた吐息を零した。
「なにオマエ。すげー、やらしすぎ」
「あ……あうう、ごめ、ごめんなさいい……」
リュウはぐしゅっとすすり泣きながら、ボッシュに謝った。
ほんとに嫌になってしまうくらい、すごくやらしいんだと自覚はあるのだ。
だけど、どうにもならないのだ。
ボッシュに触られると、火がついたようになってしまって止まらないのだ。
「――――あ……」
どん、とまた乱暴に肩を掴まれて、リュウは仰向けにデスクに乗せられ、押し付けられた。
重厚なデスクは、リュウひとりの体重なんかでは軋みもしなかった。
書類がばっと飛び散って、床に落ちた。
ボッシュはリュウの脚を大きく開かせて、また奥まで侵入してきた。
「ああぁあ……はあぁん、ぼっ、しゅう……」
蕩けきった嬌声を上げて、リュウはボッシュに抱き付いた。
ボッシュはそれを咎めはしなかったし、どうでも良さそうにしていた。
リュウは安堵しながら、ボッシュに抱かれた。
ほんとに全部諦めてしまうと、こんなにも静かにボッシュのことが好きなんだ、とリュウは思った。
「きもちい? リュウ」
「ん、んっ」
リュウは必死で、こくこくと頷いた。
ボッシュはそれに関しては気に行ったようで、リュウの頭を撫でて、あっそ、なんて言った。
「中で出されるの、好き?」
頷いて、リュウはぴくっと震えた。
ボッシュがリュウの一番深いところまで入ってきて、中から浸蝕して、それは快楽以外の何物でもなかった。
注がれた温かいあの感触が、リュウをどこまでも安心させてくれるのだった。
ボッシュはリュウの頭を撫でて、そればかりは愛する人にするように訊くのだった。
彼はきっとそれがリュウを突き刺すことを知っていた。
与えられる痛みなら、リュウはそれを受け入れ、受け止めるしかない。
「俺の子供、産んでくれる、リュウ?」
リュウはおずおずと頷いて、あれ、なんだか今の、すごいことじゃなかったかな、なんてぼんやりと思った。
「嬉しいよ」
ボッシュがふうっと笑って、それでリュウは思考するのを止めた。
ボッシュが望むなら、求めてくれるなら、何だってリュウはするだろう。
それがどんなものであっても、身体を差し出すだろう。
あと少しだけこうしていたいっていうだけで、多くは望まない。
心が壊れても、身体は1000年ここにある。
そして、それはボッシュのものだ。
ボッシュは喜んでくれたようで、リュウはそれが嬉しかったし、なにも悪いことじゃないはずだ。
リュウはボッシュに身体を預けきったまま、彼にぎゅっと抱き付いて、縋り付いた。
もう後悔することなんて、リュウにはあるわけない。
また揺さ振られて、中で出されて、まだできたばかりの子宮に注がれて、その温かい感触はリュウをどこまでも安心させてくれた。
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