「ひゃ……」
下腹をつうっと指で撫でると、リュウはびくっと震えた。
「ん、なに? へんなの……」
リュウは、何も知らない子供だった。
身体を交える意味も、中まで愛されたことも、触られる感覚も覚えてはいなかった。
脚を取って、太腿を、膝を、爪先まで舐めて、リュウに触った。
彼はまた少し不安そうな顔をしていた。
「ボ、ボッシュ? どうしたの、へんだよ……」
リュウは異様な気配に飲まれていた。
ボッシュがまさかリュウにひどいことをするわけがない、とリュウは信じきっていた。
だがボッシュは、乱暴にしてやらないように精一杯の注意を払いながら、リュウの膝を割り開かせた。
きっと自分はリュウにまたひどいことをするだろう、ボッシュは自覚していた。
だがリュウに触りたかった。
彼を前にすると、いつもそうだ――――我慢がきかない。
「……っ? い、いや、なに、かたい……」
性器を触れ合わさせると、リュウは軽いパニックを起こして、身体を引いた。
すぐにそれとわかる仕草だった。
リュウは怯えている。
「リュウ……ひどく、しねえから」
「な、なに? ボッシュ、なに、これ?」
リュウは半泣きで、ぐすっと鼻を鳴らしながら、ボッシュのコートを引っ張った。
「や、やだ、あつい、へん……」
「リュウ」
「こ、こわい、ボッシュ……こわいよ、やだ」
やだあ、と顔をくしゃくしゃにして、ついにリュウは泣き出してしまった。
はっとして、ボッシュは慌ててしまって、リュウをぎゅっと抱き締めた。
だがリュウはじたばたと暴れて、ボッシュから逃げようとした。
「リュウ……!」
「や、やっ、やだあっ!」
「リュウ! 落ち付け! もうしない! なんにも……」
ぎゅうっとリュウを抱き締めて、その肩に顔を埋め、ボッシュは少し涙の混じった声でぼそぼそ言った。
「なんにも、しない……悪い、リュウ……」
「う……」
リュウがぎゅうっと眉を顰めて目を瞑って、消え入りそうな声で、言った。
「ひどいよ、ボッシュ……」
「……悪い、ごめんな、リュウ……」
「び、びっくり、した……食べ、られちゃうと……思、った。ボッシュ……」
リュウは涙でべたべたに濡れた顔を上げた。
嗚咽混じりで、声は上手く言葉になっていない。
「お、おれのこと、食べちゃおうと、した?」
「……した」
「う、おれ、おいしく、ないよお……」
リュウはボッシュのコートに縋りついて泣いた。
怖かったよお、とリュウは言った。
だがボッシュに縋るのだった。
もう逃げはしなかった。
逃げ出して世界にひとりきりになることに、リュウは何より怯えていた。
「……もうしない。食べや、しないよ」
リュウの頭を撫でて、ボッシュは言った。
リュウはしばらく迷うように目を伏せて、やがて覚悟と決意にぎゅっと目を閉じ、言った。
「お、おれっ、ボッシュになら、いいよ。で、でも痛いのはやだけど……」
「……リュウ?」
「う、だって、おれ食べなきゃ、ボッシュがお腹空いて死んじゃうなら、そんなの嫌だし……おれひとりは、いやだよ」
リュウは「でも」ととても困った顔をした。
「でもおれが死んじゃったら、ボッシュはひとりぼっちだよ。ボッシュが可哀想だ」
「……うん。そうだな」
「あのね、だから、じゃあ、片手だけあげる……手、繋がない方。それでお腹いっぱいになるかなあ?」
「ばあか」
「う」
ボッシュは溜息を吐いて、リュウの額を小突いて、そんなんじゃないよ、と言った。
「そういう意味じゃない」
「……ちがうの? なに?」
「……オマエの、中に入って、気持ち良く、なりたいんだ。……こ、こんなこと言わせんなよ、恥ずかしい。くそっ」
「いたっ」
照れ隠しまがいにリュウを小突くと、彼はちょっとふてくされて、痛いよ、と抗議した。
「わかんないよ。どうすればいい? おれ、死なない? ボッシュもだいじょうぶ?」
「死なない。大丈夫だよ」
「……で、でも、怖かったよ……」
「……なんにも怖いことはないよ」
ボッシュはリュウをきゅうっと抱き込んで、辛抱強く、教えてやった。
「好きだから、リュウが欲しい。触りたいし、気持ち良くなりたいし、オマエのこと気持ち良くしてやりたい。わかんねえかな……」
「気持ち良いの? 好きだから?」
「そうだよ」
「……おれ、好きだから、ええと……」
リュウは頭がこんがらがってしまったようで、目を白黒させている。
その様子は子供っぽくて、ボッシュはふっと微笑した。
「……でも、もういいよ。おあずけでさ。もうちょっと、我慢するよ」
「……ガマン?」
リュウはきょとんとしている。
早まったものだ、リュウはあどけない子供そのもので、かたちばかりはかつてそうあった頃とおんなじだったものだから、失念していた。
このリュウは、まだなんにも知らないのだ。
「ちょっと、キツいけどさ」
「……ガマンすると、つらいの?」
「ちょっとだけ。でも平気だよ」
今まで我慢してたよ、とボッシュはリュウに言ってやって、頭を撫でてやった。
「……オマエがもうちょっと大人になったらさ、その時は相手しろよ」
「おれ、子供じゃないも……」
「子供だよ。ハイハイ、もう寝ようぜ。明日は晴れるといいよな」
ボッシュはリュウを抱いたまま、ごろんと横になった。
まだ身体は火照ったままだったが、リュウを寝かし付けてから、後でどうとでもしてやろう。
「……どうした?」
リュウは少し居心地悪そうにしていたが、むくりと起き上がって、仰向けで寝そべっているボッシュの上にべたっとのしかかった。
「……オイ」
リュウは真剣な顔で、ボッシュの服に手を掛けて脱がそうとしているようだった……先ほどボッシュが彼にそうしたように。
「うー……」
だが不器用な指先のせいで、もたもたしている。
ボッシュはわけがわからず、リュウに訊いた。
「……何やってんの?」
「お、おれが、してあげるから。さっきの……ボッシュ、そうすれば我慢しなくていいよね?」
「……アホか」
何を言い出すかと思えば、ボッシュは溜息を吐いた。
「もう寝ろ」
「やだ。する」
「天邪鬼か、オマエは」
「やだ……するも……」
じわっとリュウの目に涙が浮かんで、ぜったいするんだ、と言った。
「……ハイハイ、泣くな泣くな。気持ちだけありがたくもらっといてやるよ」
「おれ……子供じゃないも……」
「わかったから、泣くな……あーあ、鼻水まで出てきたじゃん、オマエ。きったねーなー」
頭の上に放り出してあったポーチからハンカチを取り出して、リュウの顔を拭ってやった。
リュウはされるがままで、めそめそと泣いていた。
「ほら、泣き止め」
「し、してくれるまで、やめないもん……」
「……ほんっとに、しょーがないね」
はあ、と溜息を吐いて、ボッシュはリュウの背中を撫でてやった。
なんだか本当に小さい子供を相手にしているみたいだ。
「ね、してよお……」
「痛いよ」
「ん、ガマン、できるから……」
「オマエ絶対また泣くし。泣き虫リュウ」
「な、泣き虫じゃないもん」
ちがうもん、と言って、リュウはボッシュの服に関しては諦めたようで、自分のシャツをまたはだけて、どうしよう、と途方に暮れた顔をした。
「おれ、裸になったよ? どうすればいい?」
「バカ、寝ろ」
「やだもん。ねえ、ボッシュう……」
リュウはボッシュの肩をゆさゆさと揺らして、哀願した。
「ね、ボッシュ……ボッシュうぅ……」
本格的に、リュウは座り込んで泣き出してしまった。
ボッシュは頭を抱えてしまった。
臍を曲げてしまったら、また朝まで泣き喚くなんてことになるかもしれない。
なんにせよ、ボッシュはリュウの泣き顔というものには弱いのだった。
できればもう見たくない。
「……泣くなよ……」
身体を起こしてリュウを抱いて、撫でて、あやしてやった。
リュウは涙がいっぱいに溜まったあどけない目を上げて、してくれるの、と訊いた。
「……いや、そいつは……」
「う、うー……」
また泣き出してしまいそうな気配だ。
ボッシュは溜息を吐いて、わかった、と言った。
「する……が、オマエがやめろつったら、すぐやめるからな」
「うー、うん、うん……」
リュウは何度も何度も頷いて、ほっとしたような顔になり、泣き止んで、にこおっと笑った。
本当に子供みたいだ。
表情がくるくると変わる。
そんなひとつひとつに、かわいいな、なんて思いながら、ボッシュはリュウに触った。
「リュウ、抱き付いてろ」
「ん? うん」
リュウは言われたとおり、ボッシュにぎゅうっと抱き付いた。
その折れそうに細い腰を掴んで、尻に触ってやると、リュウはひゃっと小さな悲鳴を上げた。
「くすぐったい……」
「…………」
耳元でくすくす笑うリュウの横顔も、かわいい。
つうっと股に指を持っていくと、リュウはびっくりしたみたいに震えた。
「わ、わっ」
そこは乾いていたが、指の腹で何度か往復し、撫でてやっていると、次第に潤い、水音を立てるようになった。
身体のほうまで子供みたいになってしまった訳ではないようで、ボッシュは少し安心した。
リュウはといえば、顔を向けて見てやれば、困惑したように眉を顰めていた。
だが何も言わなかった。
やめるぞ、と言ってやったのが、効いているのかもしれない。
「ひゃ、あ……」
次第に濡れたそこからは、滴が零れ、リュウの腿を伝った。
少しずつ彼の呼吸は荒やいで、頬を赤く上気させ、熱っぽい吐息を零した。
「ん、ん……んんー……」
もどかしげに、リュウは少し腰を悶えさせた。
「リュウ、どうだ……どんな感じ? ちゃんときもちい?」
「え? わ、わかんな……あの、ねえ」
リュウは俯いて、わ、と悲鳴を上げた。
ボッシュの指が陰核を摘んだことに反応したのだろう、ぴくっと震えた。
「リュウ?」
「んん……ボッ、シュう、あのね、なんか、おなかのなか、さみしい……」
リュウは困ったように、どうしよう、と言った。
本当に、かわいい。
押し倒して、組み伏せて、ぐちゃぐちゃにしてやりたい。
泣かせて、ひどくしてやりたい――――欲望を懸命に押し殺しながら、ボッシュは、そう、と頷いた。
「あ、あっ? あれ、へん、ボッシュ……おれ、あ、あれ?」
がくっ、とリュウの膝から力が抜けて、ボッシュに縋りつく仕草に変わった。
「ん、ボッシュ……おれ、あ、なんかこれ、ちがう……?」
リュウはふるふると首を振り、へんだよ、と繰り返していた。
「おなか、あつい……ボッ、シュ、なに……? 助けて……」
きゅっと眉を顰めて、リュウは泣き出しそうな顔をした。
ボッシュは開いた手で浅い呼吸を繰り返しているリュウの手を握り、繋いで、大丈夫だよ、と言ってやった。
「ふ、あ、あぁっ?」
くっと指で肉を押し広げ、中を弄くると、リュウは甘さの入り混じった悲鳴を上げた。
「あ、ボッシュっ? な、なんか、なか、入ってきたあ……!」
「リュウ、かわいい……」
リュウの感じるところを指で何度か突付いてやると、彼はあっけなく達してしまった。
膣がびくびくと震え、ボッシュの指にきつく吸い付いてきた。
痛いくらいだ。
この中に突っ込んだら、どれだけ気持ちいいだろう。
リュウの身体は気持ち良かった。
ボッシュはしばし、ぽーっとなっているリュウの顔に見惚れていたが、やがて彼がふうっと目を閉じて全身をだらんとさせると、髪を梳いて、訊いてやった。
「……どうだった?」
リュウはとろんとした目で、まるで夢でも見ているような顔をボッシュに向けて、ふるふると頭を振った。
「良くなかったか?」
「ん、んー……あのね、ボッシュう……」
舌っ足らずのかわいい声で、リュウはぽおっとなったまま言った。
彼は甘えるようにボッシュの胸に額を摺り付け、髪をくっと引っ張りながら、恥ずかしそうにしていた。
「あれ……なんで、はずかしいかなあ?」
「さあ……恥ずかしいことなんて、なんにもないだろ」
「だよねえ、んー……」
そう言いながら、リュウはまだもどかしそうにしていた。
ボッシュをものすごく艶っぽい顔で見上げ、その色にまったく似合わないふうに、困ったように、うー、なんて唸るのだ。
「あ、あのね、ボッシュ。まだ続き、あるよね?」
「ん? ああ。覚えてるのか?」
「うー……まだ、さみしいよ……ね、なんとか、して……」
リュウはぺたんと地面に座り込んで、おずおずと脚を開いた。
彼に見られない、誘う仕草だ。
ボッシュはしばらくそれに見惚れていたが、リュウが真っ赤な顔で急かしたので、ああ、と頷いた。
「は、はやくう……」
「……ハイハイ」
リュウは身体の欲求に振り回されている感じだった。
ボッシュにひどいくらい激しくされて、そうされることで絶頂を感じられるように、身体が覚えてしまっているようだった。
とんでもないふうに仕込んじゃったもんだ、とボッシュは思った。
だが嫌いじゃない。
他ならないリュウに、こうやって貪欲に求められること自体が、ボッシュにとっては快楽の一部だった。
「――――あっ!」
震えているリュウの腰を取って、挿入した。
リュウはびっくりしたような顔をしていたが、ボッシュの性器が奥まで届くと、安堵したように吐息を零した。
「……痛くないか?」
「ん、あ、ボッシュう……い、いた、けど、……へいき……」
「……もしかして、痛いの、気持ち良いか?」
「う、うー……いた、のは、きらい……」
リュウはふるふると首を振って否定したが、その顔には恍惚が見て取れた。
被虐癖でも開発してしまったのかもしれない。
ほんとに、とんでもないふうに仕込んでしまったものだ。
リュウは快楽に従順になってしまった。
ボッシュは少しにやっと笑みを零して(単純にリュウの性欲を開発してやったことが気に入ったので)そのまま少し乱暴に、以前のリュウにそうしたように、腰を打ち付けてみた。
リュウは仰け反って、甘い嬌声を上げた。
「ひゃっ、わ、あぁああっ、ぼ、しゅ……!」
「リュ、痛い? 気持ちい? もっと優しいほうがいいか?」
「ん、んんっ、いや、きつくして、ぼっしゅ……」
思った通りだ。
リュウは激しい方が、ひどくされる方が感じるようだった。
甘い声を上げた。
そして何の枷もなくボッシュに抱かれるリュウというものが、こんなにかわいいものなんだということを、ボッシュは初めて知った。
ぎゅうっと抱き締めてやった。
「ほんとに、かわいすぎ、オマエ……」
「う、あっ、ぼ、っしゅ! おれ……っ、手、つないで、え……」
「大丈夫だよ、リュウ」
震えながら腕を伸ばすリュウの手を取って、口付けて、ボッシュはそこばっかりは優しくリュウの頭を撫でてやった。
「すきだ、リュウ……俺っ、ずっと……」
「ふあっ、やああぁっ、ボッシュ、ぼっしゅうぅ……!」
ねっとりと絡みついて、ぎゅうぎゅうと絞り上げてくるリュウの膣は、単純に、気を抜けばすぐさま達してしまいそうなくらい、気持ち良かった。
裸の背中にぴりっとした痛みがあって、ボッシュは僅かに顔を顰めた。
リュウが爪を立てたのだ。
彼はぐすぐすと泣きながら喘いで、ボッシュの名前を呼んでいた。
「ずっと、すきだったんだよ、リュウ……っ、ずっと、ずっ、と……いっしょに……」
リュウに口付け、唇を貪り、呼吸を乱して――――こんなに何かに、それも一人の人間に執着できることが、ボッシュ自身驚きだった。
どうしようもなく、彼がいとおしかった。
壊して、泣かせてやることしかできなかったが、こうなってやっとリュウはボッシュを能天気に愛してくれるのだ。
「はぁっ、あぁ……っ、ぼ、しゅ……っ!」
リュウの嬌声がすぐ近くで聞こえて、頭の中が真っ白になって、くらくらした――――リュウの中で、放った。
ふっと気が付くと、リュウはものすごく色っぽい顔でぐったりしていた。
ボッシュは彼に手を伸ばし、抱き寄せた。
「……リュウ? リュ、ウ? 平気か? 痛くなかったか?」
「ん、んー……」
リュウはふうっと目を開け、ボッシュを見て、ふにゃっと笑った。
「へいき……」
彼はボッシュにぎゅっと抱き付いて、もう一度言った。
「も、……あのね、ぜんぜんへいきだよ。ボッシュは……?」
「……俺も、全然平気」
「へいき、だよねえ……」
「……そうだな」
そして二人で微かに笑い合って、ボッシュはまたリュウを押し倒して、深く愛した。
リュウが甘く鳴く声が、耳に心地良かった。
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